| 第46回修業店を売りにする料理人。でもそのまま信じていいの?
 フードジャーナリストの紹介記事に特に目立つのが、「どこそこで修業したシェフ」とか
 「どこそこ出身のシェフ」というものです。
 中には、東京の有名料理人との
 師弟関係などを解説した特集までありました。
 きらびやかに本場の星付きレストランの数々の経歴を料理人から聞いたまま垂れ流している記事を見て、
 果たして本当に意味があるのか、と疑問に思ってしまいます。
 我々一般客にとっては、
 たとえ3つ星レストランで修業していたといっても、
 玉葱ばかりを剥いていただけの経歴は必要ありません。
 料理人が発する言葉をそのまま記事にするのではなく、
 実際にその店で何をやっていたかを検証する必要があるでしょう。
 恵比寿の「ル レストラン ドゥ レトワール」。シェフの出身店である「ギイ・サヴォア」を
 あまりに前面に押し出している営業スタイルは逆効果です。
 師匠の認定書のようなものが飾られてあり、
 メニューにも「ギイ・サヴォアさんの・・・」と
 説明した料理が結構目に付きます。
 シェフの性格は別にして、
 アラカルトに魅力あるものがあるのですから、
 師匠の名に頼りすぎると逆に自信がないのかとも受け取られます。
 「銀座 あさみ」は「京味」出身と紹介されています。でも、京味は京味でも「天王洲店」へ修業に入っていただけです。
 その店は去年閉鎖されているくらいですから、
 本店とはまったく違ったものだったのでしょう。
 本店の名物総料理長も評価していなかったくらいです。
 料理のコースが3万円以上の「京味」出身とうたうには、
 1万円のコースしかないこの店の出す料理に無理があります。
 食材、出汁などまったく「京味」の流れを汲んでいません。
 紹介記事を読んだ客は、
 「京味」の先入観を持って来店しますから、
 かえってマイナス効果となります。
 同じ有名処の出身でも、「櫻川」(六本木)は安いなりに
 「吉兆 東京」の流れを感じさせる出汁、
 料理内容ですから納得する店もあるにはあります。
 料理評論家、フードジャーナリストは、出身店をむやみに紹介する前に、
 実際の味を検証するのが読者のためにも必要でしょう。
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