| 第44回スーシェフを引き抜いて新規開店した店にうまいものなし
 よく新規開店するオーナーから、どこそこ(結構人気、有名なオーナーシェフの店)の
 スーシェフ(2番手のシェフ)を引き抜いてシェフに据える、
 という自慢話を聞くことがあります。
 でも、たいてい期待して出かけてみても
 帰路には落胆しか残らないのはなぜでしょうか。
 本来ならば、新規の店のオーナーは実績のある店の現役のシェフを引っ張ってきたいものです。
 でも、繁盛店や大店でシェフを張っていた人は、
 スポンサーを見つけて独立する野望を持っている場合が多く、
 また仮に引っ張れるとしても条件的には高くついてしまいます。
 その点、こき使われていた2番手のスーシェフは、
 トップに立ちたいでしょうし、
 独立の際にスポンサーを見つけるためにも
 一度は雇われシェフを経験したいものです。
 少々条件が悪くてもシェフとしての経験が積めるので
 オーナーの誘いに乗ってくるでしょう。
 でも、今までいた人気店、繁盛店はオーナーシェフの裁量によってその名声を保っていたのです。
 シェフが勘違いして、人脈造り、講演活動などで
 厨房に不在が多く、実質まかされていたスーシェフなら別ですが、
 たいていはいつも指示されていた立場から、
 急に厨房内を仕切って指導力を発揮できるとは限らないのです。
 そのような実力のある、厨房を任せられるようなスーシェフは
 なかなかオーナーシェフが手放しません。
 つまり、いくら傍らでシェフの料理造りを見、レシピを覚えていても、自分のアイデアの料理を生み出すことや、
 食材の仕入れを考え、厨房内を統率して
 おいしい料理をタイミングよく提供することには
 未経験の場合が多いのです。
 結果、開店直後の店では、「有名店のスー」だったのに
 おいしくなかった、となってしまうのです。
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