通勤時間でわかる仕事への情熱
私の知っている中小企業の社長さんで、自分の会社の従業員の交通費手当を全員一律に支給している人がある。
ふつうは実費支給になっているのを、どうして一律支給にしたかというと、サラリーは本人の能力と会社への貢献度によって支給すべきものであるが、交通費はもともと勤務する場所を基準にして考えるべきもので、各人の家からの距離に対して支給すべきものではないと考えているからである。
もし家からの距離で交通費を支給するとなると、遠くに住んでいる人ほどトクをすることになる。遠いほど家賃が安くなるハズであり、会社に来るまでに時間がかかるから、電車に揺られているだけでも疲れてしまう。
反対に、会社のすぐ近くに住んでいる人は高い居住費を払っているハズであり、通勤にさほど時間を要しないから、疲労の少ない状態で会社に出て来ることができる。遠くから来る人の交通費を負担するならば、近くから来る人の住居費の補助をするのも道理であり、もしそうしないとなると、疲れて出てきて、会社のために働く気力を失っている人の肩を持つことになってしまう。
いわれてみれば確かにそのとおりで、会社まで来るのに、二時間も三時間もかけているような人では、たとえどんなに早起きが平気な人でも、「時間を大事にする」精神がないという意味で、評価はできない。
朝の九時から夕方の五時まで、会社のためにしっかり働けば文句はないだろう、という人があるかもしれないが、人間にとって大切なのは勤務時間だけではない。勤務時間以外は平気で浪費する人が、勤務時間だけ上手に使っているということはあまり考えられない。むしろ勤務時間以外の時間をできるだけ工夫して能率的に使う人が勤務時間をフルに活用する人であろう。 |