仕事と住居の経済学

マイホーム型も徹底すれば偉い
仕事本位の人生を送るか、それともマイホーム本位の人生を送るかは、人によって考え方が違う。若い社員が人事異動で地方へ転勤を命ぜられたりすると、会社を辞めるのを見て、かつて帝人の社長であった大屋晋三さんは「マイホーム型のサラリーマンは駄目だ」という意味の発言をしていた。
明治生まれの気質の士から見たら、サラリーマンはサムライみたいなものであるから、死地に赴くような勇猛心がなければならない。マイホーム主義のサムライでは、へナチョコのサムライみたいなものだから映画の主人公にだってなれないであろう。
しかし、いまのサラリーマンは、サムライがなるものではなくて、百姓や町人が身過ぎ世過ぎのためになるものである。一群のサラリーマンたちがマイホームを東京都内に建てたかったが、土地が高くなりすぎたので、茨城県に建てた。そこから勤め先の丸の内までかようのでは時間がかかりすぎるから、会社を辞めて、家に近い別の会社に勤めなおした――
というのがニュースになったことがある。
一つの会社に就職して出世コースを歩み、定年になって退職金をもらって辞めるというのが日本人の常識である。常識ではニュースにならないから、ニュースになったということは、常識を打ち破る何事かが、起こったということである。
東京で家を建てるとなると、三十坪の敷地に二十坪くらいの小さな家を建てても、五千万円くらいかかる。二十坪のマンションでも四千万円はかかる。このお金の三分の二くらいをローンで借りて、二十年とか、二十五年の分割払いにすると、元利合計で倍以上の金額になる。
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