私たちには、誰でも行きつけの店があるし、また気に入りの本や何回でも行ってみたい旅行先というものがある。とくにバーやレストランは楽しみに行くところだから、馴染みの人たちがいて、こちらの好みも熟知していて、お世辞の一つもいってくれる人があれば、つい足がその方に向かってしまう。それはそれで少しもさしつかえないが、バーやレストランが行きつけの店だけに固定してしまうと、行動半径がきまってしまい、少なくともサービス業の変化からは耳や目をふさがれてしまう。それは一見、大したことでないと思うかもしれないが、新しい情報や体験から隔絶された状態にほかならない。一事が万事その調子で孤立してしまうと、固定観念がそのまま頭の中で定着してしまう恐れがある。
だから、飲食店に行く度合からいって、行きつけの店にはなるべく行かないようにしたほうがよい。そうはいっても、行きつけということは、居心地がよいとか、料理が素晴らしいということであるから、全く行かないわけにはいかない。したがって二回に一回くらいにとどめて、あとの一回は行ったことのない店、はじめての店にしてはどうだろうか。少し硬化が激しい場合でも、せめて三回に一回は新しい店に行くよう心がけるのではどうであろうか。全く行ったことのない店に行くと、世間の人がどんな発想で商売をやっているのか、どんな商売がいまウケているのか、新しい料理の傾向がどうなのか、またどんな価格設定がいまの人たちのふところ具合にあっているのか、いやでもわかってくる。たとえ味のまずい店、サービスの駄目な店、値段のデタラメな店であったとしても、一回行ってもうたくさんとなれば、あとはもう行かなければよいのだから、駄目は駄目なりに勉強になるのである。「道草を食う時まで役に立つことを考えているのか?」とイヤな顔をする人があるかもしれないが「転んでもタダで起きない」だけの学ぶ精神がなければ、この競争の激しい世の中で、先陣を切ることはできないと思う。

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