サラリーマンは「時間売り」商売
勤務時間をきめることは、実際にそれをチェックするかどうかと関係なく、一応は必要なことであろう。
しかし、チェックする会社もチェックしない会社も、社員の勤務時間をきめ、その勤務時間内に会社のために働いてくれることを期待しているが、社員の一人一人がその時間を効率的に使って会社のために業績をあげてくれることを強制することはできない。
「やる気を起こさせるにはどうしたらよいか」などとビジネス雑誌で特集をやっているのをよく見かけるが、サラリーマンというのは、周囲との人間関係に神経を使いながら、あまりやりすぎてもいけないし、あまり怠けているところが目立ってもいけないとセーブをするので、客観的に見ると、「時間売り」のショウバイだという気がする。つまり一日のうち何時間を会社に売り、その時間中にどれだけの仕事をやるかは人によって違うが、ともかく売った時間の合計が一カ月でいくらという報酬の受けとり方をしている。従って、売った時間の内容の密度によっては、うんと安いものもあれば、逆にうんと高いものもあり、タダの月給泥棒というのも決して少なくはない。
そうした月給泥棒をどうして防ぐかは、経営者の仕事の一つであるが、経営者自身もまた月給泥捧であるというシステムになっているところも世の中には多い。
自治体とか公共事業団体にはそういう組織が多いから、退職手当の水増しだとかヤミ給与だとか、架空出張手当の支払いなど日常茶飯事であり、国家財政や地方財政が大赤字になるのも決して偶然ではないのである。もしこれを改めたければ、政府予算や官営事業にも採算性を導入すべきであって、予算を節約したら利益をあげたものと見なして、役人たちに一定の比率で分配をする必要があろう。使わなければ、翌年の予算を削られるのでは、誰が役人の長になっても、予算分捕り合戦に打って出て、できるだけ予算をとり、一銭残らず使いはたそうとするにきまっている。
企業のスケールが大きくなると、創業者の個人的な影響力がうすれ、傭われてなった経営者が人を傭い、傭われる側もお役人とあまり違わない意識で働くようになるから、いわゆる「大企業症候群」の支配下におかれてしまう。「時間売り」の大集団によって世の中が一応、成り立っており、現にそれでちゃんと世の中は動いて行くのだから、いいではないかという考え方も成り立つ。
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