「骨董ハンター南方見聞録」の島津法樹さんの
道楽と趣味をかねた骨董蒐集の手のうち

第122回
<とぴっく10>
儲ける話はキライ

李朝分院染付瓶

彼はまた椅子に座りなおした。
「あのね、今日ここへくるまでに京都で7億儲けた。
 たった2時間のことだよ」
と顔を上向けた。
「ここでは金儲けの話はせんでくれ。金を使う話をしてくれる?」
と言うのだ。
僕は片道6時間も掛けてタイまで行って、
汗だらけになって買い付けをやる。
そして1時間一生懸命楽しい夢をAさんに見てもらい
15万儲けさせてもらった。
何か空しい。

「君ね、この仕事初めて12年だけれど
 今資産が4200億ほどある。
 この金でうまいものを食い、酒飲んでいたら身体を壊す。
 それにでっかい家が10軒ほどある。
 毎日寝る場所変えていたら忙しくてかなわん。
 どうしたらいい?」
彼は42歳。
「君、間違ったらいかんよ。儲け話より使うほうの話ね」
と言いつつ、ロールスロイスに乗り込んで、
忙しげに運転手に行き先を指示し、前に突き出しいってしまった。

1990年頃、こんな人が小さな僕の店にちょくちょく来ていた。
しかしその後のバブル崩壊で、
今では一人もいなくなってしまった。
彼らは家や車、絵画や遊びに
ダイナミックなお金の使い方をしていた。
しかしどういう訳か骨董に大金は使わなかった。
この原則は今のIT長者にも生きている。

骨董を理解してもらうには長い時間の付き合いが必要だ。
浮き沈みの激しいビジネスの世界で急激に儲ける人が多いが、
長く続かない。
骨董ビジネスはこんな事を考えてやらなければならない。


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