第92回
商品学(ミャンマー編)
経典カバーII―情報は曲がってしまう
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11〜12世紀 チベット 五鈷杵
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以前日本で李朝中期頃の
素晴らしい5枚組の染付墓誌が出たことがあった。
他のものとセットでしか売ってくれなかったので
仕方なくその墓誌を30万も出して買い取った。
僕はすぐ韓国の東亜日報の知り合いに連絡し、
調査の結果、子孫も見つかった。
「なぜこの墓誌が日本にあったのか」
と子孫はまだ墓の中にあると思っていた墓誌を見て驚いていた。
話し合いの結果、無償で本来の場所に返すことにした。
顎足自弁でホテルだけは
校長先生というその子孫の方が持ってくれた。
贈呈式の模様は大きく新聞で報道され僕の写真が載った。
こんないいことをしたのに日本の新聞では一行も載らなかった。
やや横道にそれるが、その時気になることを記者が言った。
僕が買ったその墓誌は在日韓国人の持ち物だった。
そのことを新聞記者に伝えたら、
「在日の人が持っていたとは言わないでほしい」と口止めされた。
情報は時々曲がってしまうので
僕は二度ばかり「在日の人がもっていたのですよ!」
と強く念を押しておいた。
それにしてもこの墓誌のように大切なものが
なぜ掘り出されて日本まで来たのだろう。
いずれにしても眠っている人には申し訳ないことだ。
それに墓誌など持っていると
祟りがあるような気もするので返すことにしたのだ。
物好きな日本人が墓誌まで買っていると思われても辛いので
「そこのところはしっかりと書いてください」
とさらにヒツコク言うとしぶしぶ書いてくれた。
善意でも往々にしてへんな風に曲がってしまうので、
すべてのことは前後を良く見ることにしている。
僕はそれほどビビンチョなんです。
(さらに次回へ続く・・・)
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