第93回
商品学(ミャンマー編)
経典カバーIII―骨董の美学
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17世紀 チベット ヤマ法王
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その僕に向って友人は
カトマンズで買ったオドロオドロシイ法具を買えと言うのだ。
断られてあきらめたのかと思っていると、
彼はしばらくして晴れ晴れとした表情で現れた。
「故郷のお寺へ寄贈したよ」
彼が言うのには四国のあるお寺の御住職が嫌がるのに、
無理やり押し付けたようだ。
彼も怖くなったのだろう。
「これはいいものだから、寺宝にするといい」
と言って10万円包んで寄贈したそうだ。
それからしばらくしてお寺さんも怖くなったのだろう、
「あれ持って帰ってくれんか」と言われたが
彼は断固として断った(らしい)。
骨董の収集にはやはり約束がある。
心の襞に届く美学が必要だ。
話はずいぶんとそれてしまったが、
その時僕はカトマンズで経典のカバーを買った。
14世紀チベットのものだと店主は言った。
10年ほど持っていてある人に買ってもらった。
それからさらに20年の月日が経ったが
昨今クリスティーズやサザビーズのオークションに
このタイプのカバーがよく出てくる。
表に彫られている仏像彫刻は本当に良くできていた。
何より使い込んだ木の艶が気に入って500ドルも出した。
今同じような作品が1万ドルを越えている。
興味本位で恐ろしいものを買うより
美しいもの選ぶほうが、いかに素晴らしいかは
この話でよくお分かりだろう。
彼が買った法具も同じくらいの値段だった。
《経典カバーの偽物、本物の見分け方》
本物は
1、周囲の蓮弁文の彫が深い。
2、裏面の板が手斧(ちょうな)仕上げになっている。
その角が丸く滑らかな時代のスレがある。
3、木が軽い。(古いものは木地がよく乾いているので)
4、彫られている仏像の様式が時代によって異なる。
諸君、健闘を祈る。
これはやや難しかったかな!
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