「骨董ハンター南方見聞録」の島津法樹さんの
道楽と趣味をかねた骨董蒐集の手のうち

第23回
応用編(1)
良い骨董屋-職人気質の商売人

僕は脱サラをして
今関西で一番骨董屋が多い通りの一角で商売をしている。
それだけに競争も激しい。
お客さんも遠いところから足を運んでくださるので
しっかりとした商売をやらなければいけない、
と自分に言い聞かせている。

こんな感じで20年間やっている。
同業者とは挨拶を交わしたり
イベントのときなどは協力して仕事をやるので、
骨董業者の性格なども少々分かってくるようになった。
この商売をやる人たちは殆どの人が一家言を持っており、
表面的には柔らかいがそれぞれプライドが高い。
僕が昔素人の頃、この通りで経験したことを話そう。

「この初期伊万里降りもの(灰、砂)があるね」
「そうですな。なけりゃ今頃ここにはありまへんな」
「高いでしょうね」
結構落ち着いた雰囲気の中、
高価そうなものを並べてあるので中々値段が切り出せなかった。
「そりゃまあね」と、値段をはっきり言わない。
陳列品にはプライスカードが付いていなかった。
吹き墨の兎文の皿を
値打ちも知らずあれこれと僕なりの講釈をしていた。

「なんぼですか」
「150万ですな」
「ええー!そんなにするん?」
といってちょっと乱暴に置いた。
「お客さん、お若いから無理あらへんけど
 置くときは注意しなさいよ。
 私ら丁稚の頃はカタッとでも音を立てたらどつかれましたんやで」
「音ぐらい立てておいたかて割れへんやろ」
注意されてむっとした僕はもうこの店から出ようと思った。
「古いもんは目に見えんニュウがあって
 ちょっとした衝撃でわれることがありまんねん。
 割れたらお互い不幸でっしゃろ」
何か心の中にグサッと突き刺さるような言葉だった。

「品物を持ち上げたり、横へ動かすときは
 物から目を離したらあきません。
 お客さんの中にはあせりの人もおりまして
 皿を掴んでいるのにその先の壷を見てる人がいて、
 手元が疎かになって横の物に当てよりまんねん」
この言葉が今でも僕の中で生きている。
色々言われたが結局その店で古伊万里の皿を一枚買った。
高ぶらずに客をリードして
作品の扱いまで教えてくれるような店にはきっと良いものがある。
その人はもう何年も前に亡くなってしまったが
本当は物腰の柔らかい人だった。
良い店とは良い主人のいる店だ。


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