第22回
実務編(12)
仕組まれた手口、カラチ商人との攻防
20年ほど前、
インドの彫刻やガンダーラのレリーフを仕入れようと
かなり危ない橋を渡ったことがある。
はじめカラチに入ってバザールのあちこちを覗いて回ったが
殆どが偽物ばっかりだった。
それでも何とかましな商品を入手して取引を終えた。
これ以上骨董を探しても無駄だと思ったので
絨毯のいいものがないかと方向を変えた。
絨毯店ではイランから密輸で運ばれてきた
コムの絨毯があると言われ見せてもらった。
素晴らしい織りの絨毯で同じようなものが
有名百貨店で1枚300万から500万くらいで売られていた。
事情を聞いてみると、
このペルシャ絨毯はイランの輸出税がかからないし、
小さな快速艇で直接カラチに運ばれてくるから
ここが世界で一番安いと言うのだ。
初め1枚5000ドルといっていたものを
五時間ほど粘って、10枚買うからといって
1枚1500ドルにまで値切り倒した。
「もう勘弁してくれ。アンタも社長、私も社長。
お互い会社をやっていくには少しは利益も必要だろうが」
とまで言われて手を打った。
そんなわけで支払いを済ませ、
偽物をつかまされても困ると思って梱包のときも立会い、
1.8メートルくらいの長さで
電信棒くらいの太さの梱包を3つ作ってもらった。
カラチ空港をパキスタンエアーで夜中に出る便を予約していたので
半金払い、半金は空港と言うことで運んでもらうことにした。
勿論絨毯は出発するまでホテルに持ち帰っていた。
ホテルのチェックアウトを済ませると
小型トラックで絨毯屋の社長と運転手がやってきた。
トラックの後ろに絨毯を積み込み空港へいく途中、
金を支払ってくれと言うので
「全部終わって機内持込のタグをもらうまではだめだ」
とその話を蹴った。
空港について「じゃあ通関してきます」といって
社長と運転手が税関の方へ3本の荷物を持っていった。
しばらくすると税関と社長と運転手が
ぶつぶつ言い合いながら僕のところへやってきた。
「ミスター、これは違法にパキスタンに入ってきたものだから
没収します。
しかもあなた10枚も持ち出すのは密輸出ですよ」
ととんでもない言いがかりを税関がつける。
「僕はこの人から買ったんだけどね。だめだったらお金返して」
と言うと社長は僕に
「あなたね。5000ドル払ってください。話をつけますから」
と耳もとで囁いた。
税関氏は難しい顔をして「没収、没収」と言うし、
絨毯屋は「5000ドル、5000ドル」とかしましい。
僕もちょっとパニクってしまって
「2000ドルで何とかせいや」と絨毯屋に交渉させた。
結局それで手を打ったが
どうもそこは出来レースだったような気がする。
そしてまだもう一段難問が待ち構えていた。
パキスタンエアーのタラップの下に
何か見覚えのある荷物が3つ転がっていた。
飛行機はエンジンをゴー、ゴー吹かしているし
タラップの上からシチュワードが手招きをしている。
しかし気になって荷物を確認するとやっぱり僕の絨毯だった。
渋る乗務員をタラップの上から引き摺り下ろし、
「おまえんところの不手際だよこれは。
荷物をこんなところにおいて、いい加減にせい」
といって手伝ってもらった。
もし確認しなかったら
きっとあの荷物は行方不明になったに違いない。
パキスタンで取引をするときには
最後の最後の最後の最後まで気を抜かぬこと。
これに尽きる
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