「骨董ハンター南方見聞録」の島津法樹さんの
道楽と趣味をかねた骨董蒐集の手のうち

第21回
実務編(11)
男の花を背負ったインドネシア人との取引

世界最大のイスラム教国はどこかと聞かれると、
アラビア半島のどこかを想像するが、実はインドネシアなのだ。
初めてインドネシアで仕入をしていた時のこと、

スラウエシ島のゴールデン・マカッサルホテルの前で
サムロー(人力車)を捕まえた。
値段交渉の末、2時間で2万ルピアというから乗った。
あっちへいけ、こっちへ行けと言っているうちに
細い路地へ連れ込まれ軍鶏の目みたいな感じでにらまれ、
ナイフをちらつかされて10万ルピア出せとすごまれた。
ないというと首を切る真似をして
「ダンナ、サンタマリア」と言うのだ。

そこは逃げの一手を使い、
ホテルの前まで連れて行ってくれれば10万ルピア払うと言ったら
律儀にもホテルの前まで連れて帰ってくれた。
インドネシアはどこへ行っても
ホテルのガードマンは警官のアルバイトだ。
僕が「強盗です!」と言うと
すぐサムローとの間に入って話し合い、
3万ルピアで話をつけてくれた。

こんな風にやることはやるが後はさっぱりしている。
次に同じサムローに会った時、
向こうから明るく笑いながら
「やあこの間のダンナ、どちらへ?」と近づいてきた。
荒っぽくって論理的ではないけれども根がなくて、
初めのとっつき難さがはがれてくると本当に好きになる人たちだ。

口利き屋と2人で飯を食っていた時、
「俺がおごる」と言うから
「ありがとう」と受けたらべそをかいてレジで金を払っていた。
別れ際、バイバイと手を振ったら思いつめた顔をして、
「ノリキ、タクシー代を貸してくれ」と言ってきた。
全く一文も持っていなかったのだ。
それでも男を張って僕にエエカッコウ見せるナイスガイもいる。
こんなタイプはアジアのどこにもいない。
だから僕も奢ってくれた額にタクシー代をプラスして渡した。
「オー!マイベストフレンド!サンキュー」
と言って強く強く手を握られた。
この微妙なところがイスラムの美学、相互扶助の精神なのだ。

骨董屋の人たちも皆個性的で、あれが良い、これが良いと
いろんな物を持ってくる。
こんなものがほしいとオーダーすると
一晩寝られないくらいコンタクトしてくる。
その日も夕方から10人くらい売込みがあった。
もうこれで終わりだろうと時計を見ると1時を過ぎていた。
それでも枕元の電話がブーッと鳴る。
こんな時間になんだろうと取り上げてみると
「私です。」
といって知らんヤツから電話がかかってきた。
「今何時だと思ってるんだ。」と言うと、
「1時ですか。」という。
「私は11時間かけて
トラジャからあなたのために荷物を運んできました。」
と言うからしょうがないから来いと言うと、
待てど暮らせど現れない。

翌朝飯を食っていると、
満面に笑みを浮かべビニールの袋に新聞紙で包んだ
焼き物らしきものをぶら下げて近づいてくる男がいる。
昨夜1時に電話をかけてきたのは彼だったのだ。
飯をかき込んで部屋に案内した。
包みを開けてみると
昨夜いろんな人が持ち込んできた見覚えのある品物ばかりだった。
インドネシア人は思い切り開けっぴろげで
前後の計算ができない人が多いが、
そこへ入ってしまうと意外と面白い。
イスラムとはきっとそんな世界なのだろう。


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