誰が日本をダメにした?
フリージャーナリストの嶋中労さんの「オトナとはかくあるべし論」

第140回
水着を透かしてみたら……

盗撮が流行っているという。
女性用トイレやロッカールーム、駅の階段などでの盗撮は
今に始まったことではなく、
某有名大学の教授も立派なお仲間だったというから、
これはもう一億総助平化への道をまっしぐら、といったところか。
が、盗撮は盗撮でも、
今流行りのものは「透視撮影」の透撮なのだ。
数年ほど前から、主に海水浴場などで
この“透撮”が問題化しており、
監視員たちも、女性の水着の透撮を監視するほうに手がとられ、
肝心の水難事故の監視がおろそかになっているという。

透撮というのは、
赤外線フィルターを着けたカメラやビデオで、
水着姿の女性を盗撮するもので、
それら盗み撮りされた若い女性たちのあられもない姿が、
インターネット上にどんどん流されている。
赤外線は一般の可視光線よりも波長が長く、
薄い生地であれば通り抜けてしまう性質がある。
つまり、スーパーマンが
恋人ロイスのドレスを透かして見たように、
着ているものすべてが透けて見えてしまうのである。
といっても、
レントゲンみたいに骨まで透けてしまうわけではない。
《骸骨や、これも美人のなれの果て》
とは漱石先生の言葉だ。
どんなグラマーな美人でも、
みんな骸骨に見えてしまったら興醒めもいいとこだろう。

さて赤外線フィルターは秋葉原などでも売っていて、
使い捨てカメラやケータイなどにも装着可能だという。
つまりいつどこで透撮されてもおかしくないってことだ。
透撮を防ぐ手だては、重ね着をすること。
水着も、紺のスクール水着や黒の競泳用パンツなどは丸見えで、
かえって白い水着のほうが透けにくいという。
水着メーカーも対策に躍起で、
赤外線を吸収して見えにくくする水着を開発中だという。
必要は発明の母。
不心得者たちのおかげで、技術はどんどん進歩していく。

私が不審に堪えないのは、
むだ毛を剃り、ハイレグやらTバックやらで肌を剥き出しにし、
もはや一条の線と化した水着で
男の色情を掻き立てておきながら、
その当の娘たちが、「ウッソー!」とばかりに、
透撮に憤慨し大騒ぎしていることだ。
このふくらみを見ておくれ、
とあられもない姿を誇示していたのは、どこの誰だっけ?
それにしても、ようやく透かして見えたものが、
池波正太郎ファンにはお馴染みの“毛饅頭”とはね。
これなら甘党の男たちもきっとこう言うに違いない。
「饅頭こわい」と。


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