誰が日本をダメにした?
フリージャーナリストの嶋中労さんの「オトナとはかくあるべし論」

第130回
尻をまくらば穴一つ

大学時代、同じ学年に薄気味のわるい双子の兄弟がいた。
どこか爬虫類を思わせる風貌のこの兄弟は、
大学のキャンパスをboy-meets-girlの場と見なしていて、
いつも二人がかりで女子学生をナンパしていた。
聞けば“千人斬り”が目標だそうで、
大願成就まであと一歩、などとうそぶいていた。
「うらやましい……」
と思わず呟きかけてしまった私だが
ほんとうのところは、
「バカな奴らだ」と、心中ひそかに軽蔑していた。

私はむかし、新宿のナンパ名人と呼ばれる男を取材し、
つまらぬ記事を書いたことがある。
このナンパ術が実にケッサクだった。
どんな女性が引っかかりやすいか、
まずは服装の色や形から科学的(?)に分析、
意外やボディコン女はガードが堅いという結論に至った。
まためざす女性の真正面からアプローチするのはド素人で、
女性から見て左45度の角度から攻めるのが一番効果的だった。
これが有名な「左45度の法則」だ。
バカバカしいと思うだろうが、
名人がやると、ものの15分も経たぬうちに
ラブホテルへ連れ込んでしまう。

ナンパするほうもバカなら、ナンパされるほうもバカ。
世の中には、見知らぬ男に声をかけられ、
ものの数分でホテルに行き、尻をまくってしまう女がいる。
これが辻君ではなく、歴とした素人娘というのだから、
貞操なんて言葉は、とっくの昔に死語と化してしまった。
「冬ソナ」に代表される韓国ドラマのブームを見ると、
日本の女たちは身を焦がすほどの純愛に憧れている、
とつい思いがちだが、
女性誌などの特集を見る限りでは、
昔も今も変わらず、いかに多くの男の気を惹くか――
その一点だけに、女の関心が集まっている。

千人の女と枕をかわせば、
千倍も深く女を知ることができるのでは……
悲しくも男たちは、そんなはかない夢を抱いてしまう。
が、私の貧しい経験からいっても、
女はどれも同じで、尻をまくればまくるほどわからなくなる。
つまり一人の女の中に、
千人分、万人分の女が詰まっていて、
女はどれも同じなのだ。
このことは女性にもいえて、
一山いくらの男に山ごと愛されても、
骨折り損のくたびれ儲けで、男のことはいっこうにわからない。
それでも男は助平だから、
心の裡でせっせと千人斬りに励んでいる。

キリスト曰わく。
《すべて色情を懐きて女を見るものは、
 既に心のうちに姦淫したるなり》と。 


←前回記事へ 2005年11月4日(金) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ