第129回
バカの見本市
私が日本の若者ほど古今未曾有の醜い存在はない、
などと若者の悪口ばかり書くので、
実家の老母は
「いつか仕返しされるよ」
と本気で心配してくれている。
「大丈夫だよおふくろ、あいつらにそんな度胸はないし、
もしも襲われたら返り討ちにしてやるよ」
と、冗談まじりに応じれば、母はますます心配そうな顔をする。
年老いた母に要らぬ心配はかけたくはないが、
若者批判は当分の間やみそうにない。
なぜなら日本の若者が、
世界中で最も醜い存在だという確信が、
強まることはあっても弱まることはないからだ。
「いや、ダメなのはほんの一部でね……」
と、この期におよんでまだ若者の肩を持つ大人がいる。
そりゃあ日本は広いのだ。
一人や二人、まともな人間だっているだろう。
しかし私の眼に映る彼らは、
一様にバカ殿風で、目つきはキョトキョトと落ち着きがない。
溌剌とした自負や精気を感じさせる顔など皆無に近く、
隙あらばワルさをしようと身構えているような、
わる擦れした顔ばかりだ。
これでは中国人や韓国人の足下に慴伏せしめられるのは
時間の問題だろう、とつい悲観的になってしまう。
この齢になると、面つきを見るだけで、
その人間がなんぼのものか、おおよその見当がつく。
長い記者生活の賜物か、
ほんの少し言葉を交わすだけで、
相手の教養の深浅もわかるようになった。
浅学菲才[の私でさえ、こんな大口が叩けるくらい、
日本人全体の知的電圧は低下している。
とりわけ多感であるべき若者たちに言葉がなく、
向学心や探求心も欠けていて、
凛乎とした精神を醸成する自尊心のかけらも感じられない。
奴さんたち、やたらと群れ集まってはバカ笑いをする。
私は群れるやつがきらい、と再三公言している。
とかくメダカは群れたがるというが、
惰弱なメダカには、群れるからこそ無力なのだ、
という逆説がわからない。
ピラニアや狼も群れをつくるが、
彼らはたとえ群れても、どんよりと淀んだりはしない。
「生きていても、おもしろいことが何もない」
などと、つまらぬ不平を鳴らさない。
人は困苦欠乏によって鍛えられるという。
鼓腹撃壌[の世に生まれた若者たちは、
どうやら怠惰が習い性になってしまったようだ。
「おもしろきこともなき世をおもしろく……」
と辞世に詠んだ高杉晋作が、
現代日本のふやけきった若者たちを見たら、
どんな顔をするだろう。
|