| 第31回友だち100人作るんだ? (その一)
 私には幼稚園から大学まで一人も友だちがいなかった、という話を娘にすると、
 「信じられな〜い。よほど性格がわるかったんだね」
 と半ば呆れ、半ば同情してくれる。
 「だから親友がほしいだなんて泣き言をいうんじゃない。
 女の友情なんて、所詮、
 紙みたいに薄っぺらなものに決まってるんだ」
 とダメを押すと、
 娘は「こりゃ、ダメだ」といった呆れ顔で
 ぷいと向こうへ行ってしまう。
 そりゃあ私だって人並みに「友だちがほしい」と悩んだこともある。
 が、悩めば悩むほど友だちはできなかった。
 小学生のころ、クラスで
 「花いちもんめ」という遊びをやったことがある。
 女の子の遊びで、男はふつうやらないのだが、
 先生がやろうというのではしかたがない。
 まず二つのグループに分かれ、横一線に並んで手をつなぎ向かい合う。
 そして、
 「勝ってうれしい花いちもんめ 負けてくやしい花いちもんめ」
 などと交互に歌い合い、最後に
 「あの子がほしい あの子じゃわからん
 相談しましょ そうしましょ」
 とグループで集まってひそひそ相談し、
 相手のグループから一人、ほしい人を選ぶ。
 ほしい人が決まると「決〜まった!」と叫び、お互いに「○△ちゃんがほしい」と個人を名指しする。
 指名された同士でジャンケンをし、
 勝ったほうが相手の子を自軍に引き入れる、という遊びである。
 なんと残酷な遊びをやらせるのだろう。私みたいな不人気の子は
 「Rちゃんがほしい」などとお座敷のかかることはまずない。
 結局、最後まで残ってしまい、
 お茶を挽くこと久しくなった
 年増女郎みたいな心持ちになってくる。
 一種の人気投票みたいなこの遊びでも、
 改めて自分の不人気ぶりが証明され、愕然とする。
 誰が考え出した遊びか知らないが、子供の心はひどく傷つく。
 幼稚園の卒園式などで、園児たちがよく「友だち100人作るんだ」
 なんて歌を無邪気に唄っているが、
 100人からの友だちなんて土台できっこない。
 あれほど残酷で気味のわるい歌もない。
 こんな歌を教え込まれるから、
 いやでも友だちを作らなければならないという強迫観念に襲われ、
 メル友の数400人、などと誇らしげに自慢するたわけ者が出てくる。
 こうした子に限って真の友がおらず、
 心は枯れ木のように渇いている。
 何度もいう。
 友だちなど要らない。いなくてもいいのだ。
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