第321回
読んで面白い「社史」
ちょっと、面白い「社史」が贈られてきました。
社史や公的な歴史書というと
現社長や現権力者に阿(おもね)って、
おべんちゃらを書き連ねたものが多いのですが、
送られてきた「知性 1958〜2009」と題する、
≪情報企画集団・知性コミュニケーションズ≫(※)
という会社の社史は、まさに異色です。
紹介しましょう。
近頃は、政権が交代して、さかんに
「脱官僚依存」が流行語のようになりましたが、
この情報集団のリーダーである小石原昭さんは、
もう半世紀前もから
「官僚体質をもっとも卑しむべきもの」・・・と主張しつつ、
政財界からマスコミ界・文化界にアドバイスし、
「私」を大切にすることで信頼を得て来た異端の人物ですから、
社史に登場するいわゆる、小石原人脈という人たちも、
一癖も二癖もある反骨の人に溢れていて、
その人たちが、小石原という社長像を
痛烈に丸裸にしていくところが
読んでいて、じつに面白い社史なんですね。
●梅原猛さん=「知性コミュニケーションズは(略)
異端としての存在の意味を持っていたといえよう。
しかし、今、時代の変わり目において
それはいっそうの成長と厚みを要求される(略)」
●斎藤茂太さん=「『現代の赤ひげ』『非凡な怪人物』
『乱世の雄』。小石原昭君の評価はさまざまだが(略)
この人のなかから発散するふんい気が、
相手にすべてをさらけ出させてしまうものをもっている(略)」
物故された大宅壮一、田中清玄、五島昇といった
そうそうたる大物政財界・マスコミ人はもとより、
政界の塩川正十郎さん、財界の堤清二さん、
作家の村松友視さん、評論家の大宅映子さん、
渡部昇一さんなど、さらに名前だけで登場する人も含めれば、
1000人を超す、日本の現代史を動かした
異色人物総登場の社史ですから、
これは社史というより、下手な作家がかなわない、
存在感に溢れた現代史ノンフィクションでしょう。
知性コミュニケーションズ(※)という会社自体、
事業のひとつとして企業の社史を請け負うこともあるようですが、
その社史の在り方について、小石原さん自身が
次のように語っています。
「『追悼集』『社史』も、
ただ、本が発刊されることに意義があるのではなく
それが人に読まれ、感動や思慕や勇気に生きることの喜び、
なにかの知恵や歴史認識を
読む人に与えるところにはじめて刊行の意義がある」と。
つまらん、歴史書、人物伝や小説、ノンフィクションに飽きた人、
さらに、社史は作らないまでも、
会社の戦略構想を担当する立場の人は、
読んでみると参考になるはずです。(非売品のようですが・・・)
これからの「反骨」「脱官僚」の本来的な意味も分かります。
僕の主治医の帯津良一先生も、そして
僕のコメントも掲載されました。
※ 知性コミュニケーションズ
港区元赤坂1−4−2 知性ビル
03-3403-6451
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