第268回
20世紀最大の≪食の革命児≫
食はいのちの源だ、身体(からだ)は、
これまでに食べてきたもので作られる、つまり、
人間のいのちとは、あなたが歩んだ
食生活の歴史そのものだ――、
食べ物はからだもこころも運命すら変えてしまうから、
「キノコは体にいい」「納豆は血液をきれいにする」・・・
といった、クイズもどきの食事改善で、
治療設計や人生設計が果たせるものではない――と
警告したマクロビオティックの始祖・桜澤如一の
≪人間は食べ物のおばけだ≫という話の続きです。
桜澤如一という人は、医師ではありません。
大正から昭和の時期に優れた食養指導者として、
日本国内はもとより、フランス、ベルギーからアフリカ、インド、
そしてアメリカ、ベトナムまで、
世界各地で精力的にマクロビオティックの普及運動を展開。
人類の平和、心の安泰を得る基本は
≪陰陽調和≫に基づく玄米菜食にある――、
≪東洋医学がいのちの実学として優れている≫――、
として、多くの難病患者を救い、
また、正しい食生活こそ、
世界に平和をもたらす源だと、説いて回った人でした。
西洋医学から東洋医学までを熟知した理論家ですが、
破天荒な≪食の生体実験家≫でもありました。
食べ物がもたらす、さまざまな≪いのちへの影響≫を、
ときに毒といわれるものも口にし、
また、その病状から回復を図るために、
化学劇薬ではなく、玄米菜食法を使い、
自らのからだを≪生体実験≫とした上で、
多くの難病患者に食養指導をしてきたわけですから、
欧米医学のモノマネ論文で
糊口をぬぐっている医者や学者とは、
説得力も影響力も迫力も違っておりました。
まさに≪人間は食べ物のおばけだ≫
≪食は運命を変える≫
≪食はいのちの源だ≫・・・と提唱して
機械式医学を覆すべく、
欧米の本拠に乗り込んだわけです。
夫人のリマさんと共に、
握り飯を抱えてシベリア鉄道を横断し、
あるときは、フランスのパスツール研究所に、
また、あるときは、
アフリカのシュバイツァーの研究所に乗り込む――、
人間を≪機械のレベル≫ではなく、
≪いのち丸ごとのレベル≫でとらえる実用医学が
本物の医学だとして、
化学劇薬ではなく≪食で病気を治す≫
≪食で人生も世界も変える≫ということを説いて回り、
実際に、多くの内外の難病患者を治して
生きる希望と勇気を分かち与えたわけですから、
まさに≪20世紀最大の食の革命児≫といって、
言い過ぎではない業績を残した傑物でした。
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