第85回
優雅な旅に憧れている方に 1
6月末、ひょんな事から優雅で贅沢な体験をしました。
オリエント・エクスプレスがオーガナイズしている
フランスのローヌ川を小型船で1週間かけて旅
(日本オフィスのホームページに紹介があり、
具体的なことがわかります)をしたのです。
ここで「船」と表現しましたが、
フランス語でいうと「ペニシュpeniche」という底の平たい、
もともとは物資の運搬に使われる川船です。
今も実際多くのペニシュが
セーヌ川やもちろんこのローヌ川を行き来して働いているので、
具体的にどんな形の船か
思い当たる方も多いのではないかと思います。
今回乗ったのは1963年ベルギーで生まれたペニシュで、
1991年にナポレオン号と名づけられ
豪華ペニシュ・ホテルとして第2の船生を送ることとなった船です。
何が豪華かというと、この船には船室が6つしかなく、
乗船客は最大で12人。
それに対して船長をはじめスタッフが6人。
船室は南フランスを行くわけですから、当然冷房付き。
3食の他、飲み物もすべて料金に含まれています。
船室以外はすべて共同スペースですが、
ゆったりしたサロンでは好きな音楽がかけられるし、
ゆっくり本を読むこともできます。
上部デッキにはジャグジーもあるし、
オープンデッキなので肌を焼きたい人は
寝椅子に体を横たえ思い切り川風に吹かれて日光浴、などなど。
豪華クルーズ船の旅とおなじじゃないか、
と思う方がいらっしゃるかもしれません。
実はかなり違います。
クルーズ船は小さくてもけた違いの人数で、
船上では常時なにやかやとプログラムが組まれています。
食事も数ヶ所のダイニングで選べるし、
夜もカジノやショーが楽しめます。
日々忙しくて退屈していられない。
だからアメリカ型大規模移動ホテルかと思います。
ところが川下りだと、
陸地での観光のほかは
自分で自分の楽しみを作り出さなければなりません。
個人の自由を最大限尊重した動くプチ・ホテル。
まさにヨーロッパ・スタイルではないでしょうか。
さらに移動も何もかもがとてもゆっくりなのです。
実際受身に慣れている点と、
ジッとしているのが苦手な日本人には
少々難しい面があるかもしれません。
しかし「ゆっくり」だからこそ、
完備された設備や美味しい食事やワインを心から楽しめる。
この旅をして、日本人がしばし扱いに困る時間的ゆとりこそ
贅沢で豪華なのではないかと思った次第です。
優雅な旅は、お金をふんだんに使うだけでなく、
時間をふんだんに使えてこそ実現するのかもしれません。
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