第48回
「古い女」と「素晴らしき母」
日本の女友達から
「フランスにも嫁と姑の確執ってあるのかしら?」
と聞かれたことがあります。
答えはもちろん「あり」です。
といっても同居による逃げ場のない嫁姑関係とは
少し事情が違うかもしれません。
だいたい日本語だと、
婚姻で生じる義理の母親を「姑」と書きますよね。
新たに家に入って来た女「嫁」に対して、
古くからその家にいる女「姑」でしょうか?
ところがフランス語で義理の親子兄弟姉妹関係を表す場合、
「美しい」とか「素晴らしい」「立派な」
という意味の形容詞がつくのです。
義理の両親はボーパランbeaux-parents。
舅はボーペールbeau-pere。
姑はベルメールbelle-mereとなります。
この頭に付いているボーbeau、beauxとかベルbelleは、
それぞれ男性形、男性形複数、女性形と文法上の違いで、
意味は変わりません。
義理の母に対して「古い女」と書く日本。
「素晴らしい母」というフランス。
その心は…わかりません
(どなたかわかる方がいらしたら教えてください)。
主人の両親は2人とも一人っ子でした。
戦時中、互いに親元を離れている時出会ったそうです。
父はユダヤ人だったためパリを離れ、
母はレジスタンスに荷担していて
ブレストにいられなくなったとの事。
20歳前後の若者が、
明日をも知れぬ戦争中に恋に落ち結婚したわけです。
親の承諾はなしでした。
義父の母
(オリヴィエの祖母。
パリの真ん中で婦人服飾店を経営していました。
彼女が95歳頃に一度会ったことがあります)は、
大切な一人息子をお金持ちのユダヤ人女性と結婚させたかったのだ、
と義母は言います。
「だから貧しいブルターニュの娘
(実際はそうでもありませんでした)なんて、
ずっと認めてくれなかったわ」。
オリヴィエは
「ジョジョ(義母の愛称)はブルトンだから頑固なところがあるし、
あまり折れたりしなかったな。
ドゥドゥ(祖母の愛称)は誰にでも命令するような強い人だった。
どっちもどっちだよ」
と言います。
とはいえ義母にしてみれば、
ずっと「認めてくれなかった」という悔しさが残っているようです。
「だから私は3人の息子の嫁(ガールフレンドも含む)は、
どんな人でも認めるって決心したのよ」と。
お蔭で私は助かっています。
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