第160回
利殖より生き方の話を重視している『悪い世の中に生きる知恵』
昭和60年の時点でこの『悪い世の中に生きる知恵』が
Qブックスの一冊として再版されました。
『悪い世の中に生きる知恵』を書いた頃、名前の酷似した
“HOW TO PROSPER DURING THE COMING BAD YERAS
(『破局に備える』ハワード・ラフ原著。堺屋太一訳。講談社刊)
という本が出版されましたが、
その後この作者の第二作『財を築く』
MAKING MONEYを翻訳する番が邱さんに回ってきました。
邱さんはこのハワード・ラフさんの本と対比しながら、
『過ぎた7年間をふりかえってみると』と題し
『悪い世の中に生きる知恵』の内容や
執筆した事柄のその後の動きについて書いています。
「私の『悪い世の中に生きる知恵』は
マンションや金融商品や株式投資にふれてはいるが、
中小企業の商売のやり方や海外市場でどう踊るかといった分野に
より多くのスペースをさいている。
それは、私が投資とか利殖とかといったことよりも、
自分たちの仕事をどうするか、
どうすれば、うまく今の時代を泳ぎきれるかということを
重視しているからである。
たとえば、小さな資本でできるサービス業はどう変化するか、
脱サラではじめるパパ・ママ・ストアにはどんなものがあるか、
それを国内だけでなく外国まで行ってやるとしたら
どうすればよいか、といった問題である。
もちろん、貯蓄したお金を
どう運用するかということも大切なことである。
インフレ下の利殖法として私はこの本の中で、
『積立マンション貯蓄方式』というのを提案した。
『積立マンション貯蓄方式』とは、
貯金ができてからマンションを買うのではなくて、
頭金さえあれば、住宅ローンを利用して先ずマンションを買う。
ローンの返済はマンションからあがる家賃収入を充て、
不足分は貯金のつもりで、他の収入で補う。
こういう方式で貯金をすれば、
インフレでお金が目減りするのを防ぐことができるばかりでなく、
不動産の値上がりに便乗することもできる。
何よりも有利なことは
月々、5万円とか7万円とかいった僅かな積立金で
1千万円、2千万円もするマンションが手に入ることである。
この方法を私は自分で実行したばかりでなく、
周囲の人にも盛んにすすめた。うちのオフィスでも何人かが、
私の提案を入れて、1千万円のワンルームマンションを買った。
頭金が100万円、あとは全部ローンにして
月7万円の家賃で貸した。
あれから7年たったので7年均等返済で借りた人は
今年で借金を完済してしまった。
きくところによると、いまでは家賃が10万円になり、
時価も1700万円になっているそうである。」
(Qブックス版『悪い世の中に生きる知恵』)
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