第151回
株式投資の盲点をつく『カネの流れが変わった』
『カネの流れが変わった』と題する経済書が
昭和52年発刊されました。
『株の盲点』と題して日本証券新聞に連載してきた作品です。
この頃、邱さんは日本は「円高後遺症」に
悩むようになったという言葉を使うようになり
賃金が高くなりすぎたことや、
消費者パワーとか組合の反対で経済効率を高める努力が
不可能になっていることを警告しています。
また週休2日制のひろがりで、
「金がなくてヒマ有り余る状態」になり、
レジャー時代の夜明けを迎えているとも指摘しています。
邱さんはそうした角度から日本の経済の変化をつかまえ
“お金の通り道”が変ってきているとの見方を
明らかにしましたしました。
「昭和48年あたりを境として、
日本経済におけるお金の流れが大きくかわってきた。
この変化は巨視的に見ると、驚くほどはっきりしているのだが、
波打ち際で見ていると、
大波小波のくりかえしの中における大波と
さほど変わりはないから、
『なあに、そのうち鎮まるから大したことはないさ』
と思っている人が多い。
実はそうではなくてボンヤリ釣竿を垂らしているうちに、
気がついて見たら、川そのものが涸れていた
ということもありうるのである。
これは事業をやる人にとっても、就職する人にとっても、
また株式投資をする人にとっても、
きわめて重要な経済現象である。
この本は、『株の盲点』と題して
たまたま日本証券新聞という投資家相手の舞台で
連載してきたので、株を買う人の立場に重点が置かれているが、
経済活動に従事するすべての人にとって
興味のあるテーマであろう。
高度成長経済時代に、
私たちが常識としてきた借金経営とか、
不動産投資というものは、
そのまま今後も通用するとは限らなくなっている。
また造船とか化繊とか工作機械とか、
日本の誇る産業が絶頂期を過ぎて
衰微のプロセスにはいりつつある。
テレビ、トランジスタ・ラジオ、カメラ、腕時計のように
日本が欧米から主導権を奪った産業だって、
はたしていつまでチャンピオンの座を守り続けられることか。
今まで海外から日本へ流れ込んでいた金の流れは、
メーカー業が日本から海外へ移動するにつれて、
日本列島を素通りする度合いがますます多くなっている。
こうした変化にうまく適応することができきるかどうかが、
日本がイギリスの二の舞をふむかどうかの
分かれ目になるのではあるまいか」
(『カネの流れが変わった』あとがき)
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