第146回
“会社”を評価する『会社社会ニッポン』
『会社社会ニッポン』は昭和49年から50年3月まで
「会社社会」と題して、日本工業新聞に連載したもので、
昭和50年に日本経済新聞社から発刊されました。
「『会社社会』というと、上から読んでも『会社社会』、
下から読んでも『会社社会』になって、
たいへん愉快であるが、どうも狙いがぼけてしまう心配がある。
今の社会構造は『会社』を中核としてでき上がった社会であり、
そういう社会の出来上がり方にメスを入れる目的からいえば、
『会社社会ニッポン』というのがよいだろうというので、
本をまとめるに当たって、『ニッポン』の四字を追加した」
(『会社社会ニッポン』あとがき)
この連載を書いた頃は「くたばれGNP」とか反公害、
反買占めなど日本国中で反企業ムードが横溢していた頃でした。
こうした時代風潮のなかで邱さんは
「反企業ムードは、新聞の論調にも現れ、
まるで公害を撒き散らしているのは企業だから、
企業をつぶしてしまいさえすれば、
すべてが解決するような異様な雰囲気になっている。
そこで、私のような
反大企業ムードを貫いてきた人間が
逆に大企業のために一肌ぬがなければならなくなり、
『会社』という組織が日本人にとっていかに大切なものであるかを
改めて力説しなければならなくなった」という観点から
筆を進めました。
そして邱さんは「あとがき」の最後を次のように結んでいます。
「幸いにして、空前の大不況を前にして、
組合側も良識ある賃上げにふみとどまったので、
日本経済は一瀉千里に凋落しないで住んでいるが、
日本全体が低成長の中で生き延びるために
『会社』というトリデを
再評価しなければならないところにはきているであろう。
私は東南アジアの国々がもし日本に見習って
経済成長を推進したかったら、日本の工業技術だけでなく、
その経営技術も併せて学ばなければ、
十分の成果を上げられないであろうと信じている」
なおこの『会社社会ニッポン』は
ベスト・シリーズの一冊として平成6年に再販されていました。
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