第145回
海外投資の実践的な指導書「邱永漢の海外投資の実際」
邱さんは『マネジメントガイド』誌から
『中小企業の社長さんが興味を持つことを書いて下さい。
テーマはお任せします』といわれ、
同誌の昭和48年の春から
約1年半『海外投資の実際』を連載しました。
「私に連載を依頼した編集長は
私が取り上げたテーマをみてびっくりした。
こんな迂遠なテーマを誰が読むものか、
と内心、思ったに違いないが、
『お任せします』と言った手前、
私に文句をつけることができない。
窮余の一策として、『社長読本』という
わけのわからないタイトルをつけ、
『海外投資の実際』という
私のつけたタイトルをサブタイトルにして、
多少なりと読者の気をひこうと努力した」
(『アジアの風』)
邱さんがこの連載で書いたのは
台湾における自分自身の事業体験です。
「私は24年ぶりに生まれ故郷の台湾に帰った。
ちょうどコスト・インフレに悩む日本と入れ代わりに
台湾と韓国が高度経済成長の2番バッター、
3番バッターをつとめる時期にきており、
私自身、台湾の経済発展のために、微力ながらも、
力を出さなければならない立場におかれたので、
偶然というべきか、必然というべきか、
ともかく工業団地をつくって、日本側からみれば海外投資の、
台湾側からみれば、外資誘致の蝶番の役割をはたすことになった。
したがって、この本に述べられている内容は、
2年来の体験から実際に得られたものである」
(『邱永漢の海外投資の実際』)
この作品が昭和49年に産業能率短大の出版部から
『邱永漢の海外投資の実際』と題して出されましたが
この作品は11年後の昭和60年
『国際感覚を磨く法』と改題してQブックスの一冊として、
日本経済新聞社から再版されました。
海外投資の本というと学者が研究室で書いたものとか、
ジャーナリストの人が取材した類のものになりがちですが
この本は実際に事業にタッチした人が
自分の体験に基づいて書いたものですから、
実際に役に立つ話が満載されているように思います。
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