第143回
季刊美術誌「求美」に連載した『絵の相場』
昭和44年に邱さんは「コレクターのための季刊美術誌」と
銘打って「求美」という美術雑誌を創刊しました。
そしてこの雑誌にエッセイを連載しました。
「まだ絵の売れなかった時代だったから、
なぜ私のような人が突如こんな
ワリに合わないことをはじめたのか、
画商さんのようなクロウト筋のひとでさえ
理解に苦しんだらしい。
しかし、私は世の中が豊かになれば、
美術の大衆化が起こるだろうと信じ、
絵をはじめて買う人の手引書になるような雑誌をつくれば
きっと成り立つだろうと考えた。
その雑誌のなかで、私自身の勉強のためにも、
私のようなシロウトがどういう発想にもとづいて絵を買うか、
趣味と実益を兼ね備えたエッセイを書き始めた。
5年はあっという間に過ぎ、
私の連載は一冊の本の分量になった」
この昭和44年から昭和49年までの5年間にわたる
連載エッセイをまとめて日本経済新聞社から刊行したのが
『絵の相場』です。
この連載中、邱さんは絵を買っています。
そして絵の場合は「自分の好みで選ぶ」のが基本で、
投資という観点は副次的なものと考えるのがいいが、
買ったあとに値が上がった絵がありそれらの特徴をあげると
(1)画法に個性があって、名前を見なくても一見して
誰の絵であるかがわかるという特徴を持っていること
(2)ただし、そのコレクターに嫌悪感や暗さを抱かせないことが
条件になっている
(『絵の相場』)と書いています。
また、この連載中に邱さんは24年ぶりに台湾に帰ることになり、
故宮博物館を訪れ、その所蔵の豊かさが
圧倒的であったという印象も紹介しています。
なお邱さんには「絵と女は好みのものに限る」と
題するエッセイがあり、『食べて儲けて考えて』(PHP研究所)
に収録されていることを付記しておきます。
また邱さんは季刊美術誌「求美」に引き続いて
「死ぬほど退屈」と題するエッセイを連載し、
この作品は『お金の使い方』に収録されています。
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