第134回
成長経済から成熟社会への移行を予言した『金とヒマの研究』
『金とヒマの研究―遊びながら儲け儲けながら遊ぶ』が
昭和47年の10月に出版されました。
この本は初版から6年たった昭和53年に
「円高でこれからの商売はどうなる」の一章をくわえて
新版が発行され、それから更に8年たった昭和61年に
Qブックスの一冊として再版されました。
このQブックス版の出版に際して
邱さんは次のように作品を紹介しています。
「お金ができることとヒマができることは、
もともと相反する概念で、お金のないときはヒマがあるが、
お金があるようになると、
お金儲けに興味が湧いてもっと忙しくなり、
お金を使うヒマもなくなってしまうからである」
「とは言っても、お金があって仕事に忙殺されて、
アッと気がついたら、
もう棺桶に片足つっこんでいたのでは味気ない。
いくら貯め込んでも、あの世に持って行けないことに
変わりはないものだから、人間もだんだん賢くなってきて、
『適当に働いて、適当にヒマをつくって、
適当にお金もつかおうじゃないか』と考えるようになる」
「この本を書いた時(昭和47年10月に初出版)は、
まだ今日のような成熟社会になっていなかったので、
どうしてヒマ潰しをやったらよいかというところまでは
頭がまわらなかった。
第一に考えたことは、人は働こうと思って
働いているのではなくて、怠ける方法はないか、
手抜きをする方法はないか、
と考えながら働くものである。
それが世の中の技術的な進歩をもたらすものである
ということである。
オートメ機器やコピー機器やコンピューターなどは
いずれもこの線上の所産と考えてよいだろう。
第二に物の不足した時代と違って、
生産を中心とした経済秩序から、
消費者を中心とした経済秩序に移行することに
気づいたことである。
製鉄やアルミや造船のような生産事業は
既に斜陽のきざしが見えはじめていたが、
私が肩入れをしたのは、
教養・レジャー産業、オートメ機器、旅行、趣味、
それからか株式投資であった。
あっと言う間に14,5年たってしまったが、
今日になってみると、
産業界の比重がすっかり変わってしまった。
この変化はもっと激しいスピードで続行する筈である。」
(以上すべてQブックス版『金とヒマの研究』昭和61年)
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