Qさんの本を読むのが何よりスキ
という戸田敦也さんがQライブラリーのガイド役をつとめます

第86回
「もうかりまっか」で肩書きがふえました

昭和35年に「私の株式投資必勝法」を書いた邱さんは
昭和36年のはじめから5ヶ月にわたり、
「サンケイ新聞」の証券欄に連載し、その連載が
『もうかりまっか』と題して筑摩書房から刊行されました。
その舞台裏を邱さんが紹介しています。

「今年(昭和36年)はじめに産経新聞文化部の脇田保さんが
『このごろは利殖の本がたくさん出ているから、
これを批評してくれませんか』といって、
投資関係の書物を何十冊か持ち込んできた。
人の本の批判をさせるよりも、ぼくに書かせたらどうです?
株についてなにも知らない人がよんでもおもしろく、
株のベテランが読んでも参考になる、
そんな本が一冊くらいあってもいいんじゃないですか?」
(『もうかりまっか』あとがき)
「文士が文化欄でなくて、
証券欄に書くのは前代未聞の出来事であったが、
これがきっかけになって、私の肩書きは"作家"から
"経済評論家"にまで拡がり、『あなたの本職は何ですか』
と人にきかれるようになってしまった」
(邱永漢自選集「私の株式投資必勝法」あとがき)

さて昭和46年に第一回の全集、邱永漢自選集を出すとき、
この「もうかりまっか」と「投資家読本」に
掲載されていた「私の株式投資必勝法」
「金儲け大学の校長先生」「"男性株"投資法」
「天気と景気」の各作品を収録して
『私の株式投資必勝法』と題して発刊され、
また平成4年にも第3回目の全集の一冊として
再版されています。

ふつう株について書いた本などは書かれたとたんに
忘れ去られる運命になっていると思いますが
この本は出版されてから50年以上の時間がたった今日も
読むに値する価値をもっています。

この間の事情を邱さんが解説しています。
「ふつうの株の記事は時間がたつと
腐って使いものにならなくなる。
あまりアップ・ツー・デイトな書き方をすると
大暴落にあった時など雑誌に載る前に
すでに間違っていたりする。
そういう生き馬の目を抜く世界の話を書いて
30年たってもまだ何とか読むに耐え、
しかも全集の中に収められていると言ったことは
稀有の例といってよいだろう。

どうしてそういうことが可能かと言うと、
私が移り動く現象にこだわらず、
その中を貫く原理原則をとらえることに
力を入れてきたからである。
いつの時代にも必ず初めて株を買う人が現れるものであり、
似たような初歩的な過ちをおかす。
安く買って高く売れば株で儲かることは自明の理であるけれども、
どんな株のベテランでも、
成長株を買って増資の度に払い込みをし、
幾何級数的に持株をふやしてきた人に敵わない。
だから、何十年かたって人気株の銘柄がすっかり入れ替わり、
株価の位置が何百円台から何千円台に移っても、
銘柄と値段を入れ替えただけで、理論はそのまま通用する。
相場の動きに対する人々の反応の仕方も、
また欲の皮の突っ張らせすぎで失敗したりする愚かさも
ほとんど変わらない。」
(邱永漢ベストシリーズ版『私の株式投資必勝法』)

また邱さんは「私がこの処女作にこだわるのは、
激しく変化する現象をとりあげても、原則をとらえれば、
生命が長いこと皆さんに理解してもらいたいからである」
(同上)とも書いています。
株に関心をもっている人にとっては
聞き逃すわけにいかない言葉ですね。


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2002年11月21日(木)

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