第16回
台湾独立の密使役を果たすことになりました
2・28事件で台湾人が虐殺される光景を見て、
邱さんは台湾を国民党の支配から切り離すほか
道はないと確信するに至りました。
そのころ、銀行の勤務先の先輩を介して
荘要伝という人物の来訪を受けました。
先輩によれば荘要伝さんは2・28事件後、
上海に渡り、台湾の政客の廖文奎、廖文毅兄弟に会い、
両博士に案内されて
南京の駐華アメリカ大使、スチュアートに
談判に行ったとのことです。
両博士は2・28事件に関与はしていないのに、
国民党から首謀者であるとされていました。
さて、こんな話は外に漏れでもしたら大事です。
邱さんと荘さんは、その週の土曜日、
荘さんの勤務先である台湾銀行の
草山温泉の寮に泊り、
二人でひそかに話をすることにしました。
荘さんは外務省や、朝日新聞に勤めてきたと
自分のことを話すとともに
香港に亡命した廖文毅さんが、
香港で台湾独立運動を起こすつもりであると話しました。
そして、本来なら自分がやるのだけど、
事情があってできないので代わりに
邱さんにお願いしたいと、
香港に飛んで、廖文毅氏に会い、
国連に台湾独立のための請願書の草案を書き、
アメリカ総領事館に提出する手伝いを頼まれました。
そしてすぐにもやってほしいと
台湾の将来の地位を決定するための草案を1週間くらいのうちに書くこと
書きおわったら必要な数字だけ書き留め、あとは全部焼き捨てること
そして香港に飛んで、初めから書き直すこと
の三つのことを頼まれました。
邱さんは少しばかり内容を確認するだけで、
荘さんの頼みを承諾しました。
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