「あなたの一番得意な料理は何ですか?」
当然ですが私が最も良く聞かれる質問です。
プロフィールに書いてあるのは、
<ピエモンテ州の名物でもある仔ヤギなどの野獣系食材を使ったジビエ>
このように記載されています。
ここだけのお話・・・正直得意ではありません。
こんなこと書くと邱先生に怒られてしまいそうですが事実です。
自分自身まだまだ勉強不足だと感じるし、
食べたことの無い食材は山のようにあります。
私なりに表現すると、「得意」ではなく「お客様に食べて頂きたい料理」はジビエです。
ジビエとは鳩やキジ、鹿やウサギなど野生の獣たちを扱った料理で
一般的に野生の獣は冬に向けて栄養を蓄えるので秋が旬になります。
このジビエをピエモンテ州の素晴らしいレストランで食べた時、
全身に電流が走り「理想の恋人」に出会えた気分でした。
そしてあの「理想の恋人」に出会えた気分を
ジビエの食材を使い表現出来るようになればお客様にもそれが伝わるのかな?
と感じています。
しかしジビエとは本来野性味を活かした料理なので
「クセ」があり女性は特に好まない人が多いですし、
また血生臭い料理は受け付けない人も少なくありません。
残念ですが仕方の無いことだと受け止めています。
では「お客様に食べて頂きたい料理」ではなく、
「自分で作って食べる一番好きな料理」を書かせていただくと、
「Bavettini All'arrabbiata バヴェッティーニ アッラビアータ」
バヴェッティーニとはスパゲッティの一種で、
切った断面が丸ではなく楕円になっている少し細いタイプのスパゲッティです。
アッラビアータとはイタリア語で「怒った」という意味ですが、
怒った料理ではなく
「食べるとピリッと辛くてと怒ったように顔が赤くなる」
という意味が含まれています。
あと「All'Diavola アッラディアヴォラ」=悪魔風
などと表現されるソースや料理があります。
食べると悪魔のように顔を歪めるという意味合いで、
唐辛子やカイエンヌペッパー、コショウを多く使った料理のことです。
話が少し逸れましたが、このアッラビアータとは簡単に説明すると、
唐辛子とニンニクを利かせたトマトソースのスパゲッティ。
これは私が20代半ばの頃、
イタリアへ渡る前に京都の福知山にあるイタリアンレストランで働いていた時、
シェフに教えて頂いた私の中での特別料理なのです。
シェフ曰く「シンプル・イズ・ベスト!」
ただ単に普通に作るのではなく、
ニンニクを少し焦がし目に仕上げ、バヴェッティーニを使う。
「これがたまらなくウマイ!」
私もこれを教えて頂いた時は毎日コッソリ作っては食べていました。
今現在私がシェフを勤めている<イル・ミリオーネ>では
今回ご紹介したスパゲッティはメニューに載せていません。何故でしょう?
答えはどこのレストランにも存在するメニューに無い裏メニューは必ず有るもの。
その裏メニューの一部として今でも私を魅了している料理の一つなのです。
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