イタリア料理は良くマンマ(お母さん)の味と云われます。
洗練され珍しい食材や調理技法を取り入れたものが最近では人気がありますが、
その根底にはイタリアのお母ちゃん達が長年守り、築き上げてきたものが
伝統料理として今でも愛されています。
日本で家族経営のレストランを見ると、
旦那が調理をしていて妻がサービスを担当するケースが非常に多いですが、
イタリアでは逆です。
妻、もしくはお婆ちゃんが料理をしていて
旦那がサービスを担当しているレストランが多いということです。
イタリアのミラノにある星付きレストラン、アイモエナディアもそのひとつです。
私が働いたレストランでは女性のシェフはいませんでしたが、
家族一丸となりレストランを盛り立てていた事は事実です。
ある私の修行先レストランでは、
お母さんがみんなのまかないを作り、営業中はお皿などを洗います。
お父さんはワインの管理、仕入れなどを担当。
娘がレストランのサービスマネージャーで、息子がシェフ。
といったように、家族みんなで分担していました。
キーポイントはやはりマンマの手作り料理(まかない)です。
今の日本ではお母さんも働くのが当たり前で、なかなかそこまで手が回りませんが、
やはり家族にとって何よりのご馳走は、
お母さんの愛情いっぱいの手作り料理だと私は思います。
私がこのレストランで働いていた頃、休みの日になるとシェフのお母さんが優しく
「ランチを一緒に食べましょう!」と声を掛けてくれて、良くお世話になり、
今ではいい思い出です。
シェフのお母さんとお父さんと私、3人で食卓を囲み、
シェフの子供だった頃のことや、お二人がまだ結婚する前のことなど
昔話に花が咲いたものです。
そして昼食を食べ終わるころに息子のシェフがやってくると、
シェフはお母さんの頬っぺたにキッスの挨拶。
ヨーロッパでは当たり前の習慣で、やはり最初は見てるだけで照れていた私ですが
イタリア生活も一年を超えてくると自然に、キッスの挨拶が出来るようになっていました。
少し話が逸れましたが、お母さんの作る愛情いっぱいの料理は偉大で、
家族のエネルギー源なのだと、そして人間の味覚は幼少時代に築かれていくものだと
改めて感じたのでした。
話題のスローフード
(伝統的な食品、食材、料理などを守り、良質の素材を提供する生産者を保護し、
消費者への味の教育を目的としたNPO)の観念を生み出した理由は、
イタリアのマンマ達が昔ながらの作り方で、
家族に愛情たっぷり注いだ料理を作っていたからなのだと改めて納得いたしました。
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