いよいよ12月、加工場は買い付けしたカチモールの加工で
寝る暇も惜しむほどの大忙しです。
今年は、周辺の道路工事で予告なしに道路が封鎖され
大渋滞が起きています。
夕方6時前には入荷作業を終えるはずが、
深夜の2時にトラックがやってくることもしばしば。
深夜に叩き起こされるスタッフは、
コーヒーチェリーの荷降ろしと品質管理の作業が夜明けまでかかり、
疲労もピークに達しました。
スタッフの健康管理のために、加工と入荷を1日止めて
完全休業日をつくって体を休めてもらっています。
つかの間の休日の早朝に
白鼻芯コーヒーの青年から電話がかかってきました。
急くように「どうしても家に来て欲しい。」と言うのです。
白鼻芯が病気?農園で病気が発生したのか?
と心配しながら訪問しました。
家に入ると、テーブルの上にコーヒーを入れるサイフォンと
コーヒーミルが置いてあります。
それも日本製の高級品で、1ヶ月の賃金相当の金額です。
そんな高額な物をどうして買ったのか尋ねると、
「白鼻芯のコーヒーと
普通のコーヒーの味の違いが解るようになりたい。」
と熱く語り始めたのです。
私たちは、その言葉と熱意に溢れる眼差しに驚きました。
焙煎も自分でやってみたから、見て欲しいと言うのですが、
焙煎ムラがひどい状態で話になりません。
一日かけて1から焙煎の方法を教えることになりました。
彼が焙煎に使っている道具は、火鉢と中華なべ・竹べらです。
中華なべの振る高さと炭火を調整しながら、
ゆっくりかき回し25分かけてムラなく焙煎していくよう伝えました。
立て続けに何度も繰り返すうちに要領を得たようで、
にっこり笑顔を見せました。
焙煎をする時の注意点や焙煎度による味の違いを説明すると、
なべの大きさを変えたりアイディアを自分で出しながら
数種類の焙煎豆を作り上げました。
その後さらに、サイフォンの入れ方を実践しました。
挽きたての豆の焙煎度・加工法が違うものを
10杯以上テイスティングすることになったのですが、
「コーヒーって美味しいものだね。」
という彼の言葉に私たちもうれしさがこみ上げてきました。
私たちは白鼻芯に対する嫌悪感を
どうしても拭うことができませんが、
彼が作った白鼻芯コーヒー、
試飲してみると一風変わったまろやかさがあります。
白鼻芯の体内で酵素によって発酵された豆が、
保山版コピ・ルアクを生み出しているのでしょう。
私たちが以前ドミニカ共和国でしていた仕事は援助ですが、
ここ雲南に来てからはビジネスとして農園や加工管理をしています。
より美味しいコーヒーをお届けすることが私たちの使命です。
近隣の農園のレベルはまだまだ低いものですが、
農園主に上から目線で指導したりお付き合いすることはありません。
常に対等なビジネスパートナーとして情報を分かち合い
良い関係を築き上げるよう心がけています。
かつての中国で生産者が
仕事に何らかしらの向上心を持つということはなかったでしょう。
彼らのハングリー精神は、常に向上心へとつながっていて、
中国農村の変化を実感した瞬間でもありました。
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