その夜、風は突然強さを増して吹き始めました。
仕事が終わりコーヒーを片手にゆっくりくつろいでいると、
遠くのほうから「ぐぉー」という地響きのような音。
それがどんどん近付いてきたのです。
加工場の警備員の部屋へ駆けつけました。
風に大量の砂が混り
加工場の大門が吹き飛ばされそうになっています。
急いで門を開けて風の通り道をつくり、
トラクターとミニバンで門を挟み縄で固定。
そして作業を終わらせ部屋に戻ったとたん、停電になりました。
とんでもない大きな音をたてて突風が襲ってきました。
カーテンの隙間から懐中電灯で外の様子を見ていると、
坂の下に置いてある加工場の道具がみるみる空へ飛んでいきます。
竜巻が発生したのです。 竜巻が去った後、懐中電灯片手に
加工場と農場に寝泊まりしている従業員全員の身の安全を確認して
ホッと胸をなでおろしました。
覚悟はしていたものの翌朝農場に広がる光景は無残なものでした。
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崩壊した豚舎 |
加工場のシンボルの木綿花の木は枝が折れ、
加工道具は塀を超えて道路まで散乱しています。
村ではほぼ全部の家の瓦と土壁が飛ばされました。
農場では、出来上がったばかりの豚舎と従業員宿舎の屋根が崩壊。
瓦礫にぶつかった子豚1匹が看病もかいもなく亡くなりました。
ところがコーヒーの木はしなやかな幹が幸いして
ほとんど無傷で立っていました。
私たちは今までも多くの自然災害に遭遇しました。
ドミニカ共和国では、巨大ハリケーンに地震と土砂崩れ。
九州では雨が降らない台風が水田にもたらした塩害。
雲南での干ばつ。
自然災害は農業を行う者にとって避けて通ることはできません。
災害に直面するたびに、
打ちのめされるような無力感と怒りを感じます。
手間暇かけて育ててきた木や作物が
たった一夜の嵐で無残に傷ついたり台無しになってしまうのです。
農場は2日間業務を停止し、
農場と村の従業員の住む家の復旧作業を全力で取り組みました。
竜巻から10日程して木綿花の木を見ると、
折れた枝の後から新しい芽が一斉に吹き出しています。
再び何事もなかったかのように再生して生きようとする姿は、
私たちや農場スタッフに希望の力を与えてくれます。
決してあきらめないこと、希望を持ち続けること、
それが自然災害に打ちのめされても農業を続けていく
唯一の原動力となっているのです。
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