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9.生活に密着させる

単語を知らないと、喋れないのは当たり前ですが、
単語を覚えるのは面倒だし直ぐ忘れます。
これは英単語を覚える辛さを味わった人ならわかるでしょう。
「頻出重要単語」なるものを覚えさせられるのですが、
あの「頻出重要」というのは実は会話とは何の関係もなく、
テストに出やすい単語という意味です。
テストに出る単語と生活で使う単語は違うので、
いくらTOEICの点数が高い人でも
英語で次の内容を1秒以内に切り出せるでしょうか?

「注文いい?れん根を輪切りにして醤油で煮込む事できる?
味付けは薄味で味の素は入れないでね。
お会計はお客さんいない時にやるからタイミング見てね」

私はとてもできませんが、中国語ならできます。
なぜなら、それぞれの単語やケースを実体験に基づけて
イキイキと身に付けているからです。
本で学んだ事であれば、こんな日常的な意思表示でも、
中々切り出せないでしょう。

私は、従業員をねぎらう食事会を定期的に開いており、
その時は殆どが激辛の四川鍋屋です。
これは私が好きと言うよりは、
地元の若い衆にとってはどんな旨い飯を食わせるよりも
安上がりで満足度が高いからです。
四川鍋とは激辛のスープに野菜や肉を入れて茹でる鍋です。
具を注文するからには、
野菜類、肉類を細かく指定しなければなりません。
始めて従業員達と食べに行った時は、
私に最初に四川鍋の食べ方を教えてくれた先輩の
オーダーの仕方を思い出し、格好がつきました。
その先輩が好きなれん根と、豚の喉は
以後私も欠かさずオーダーする事になり、今に至ります。
単語帳で学ぶ単語よりも、豚の喉のほうが、
四川で地元の人と一緒に仕事をする身としては耳にするし、
使えるものなんですね。

生活や仕事というのは、大半が同じ事の繰り返しです。
ハプニングやラッキーにより
非日常的な事態に遭遇する事もありますが、
概ね朝起きてご飯食べて寝ますし、
仕事も前日の文脈を引き継いだ事であり、
地道な繰り返しが多いです。となると、
日常は毎日繰り返しているのだから、日々目にするものや、
やる事の単語を覚えていけば反復練習が無理なくできます。
「れん根」も「輪切り」も「煮込み」も
「味付け」も「薄味」も「味の素」も頻出単語ではないでしょうが、
アンテナを張っていれば週に1回ぐらいは接する機会があります。
つまり、自分に関係ある出来事や物事でも
多くの知らない単語があるのに、
全然関係なさそうな頻出単語を覚えている暇はないのです。
身の回りのものや現象が
大体中国語の単語に置きかえられる自信がつくようになると、
会話が格段に楽になります。
知らない単語は、出会ってから覚えればよいのであって、
無理して本から覚えても私は忘れるだけでした。
私はケーキ屋だけに、日常単語よりも先に
「ゼラチン」「グラサージュ」「グルテン」など、
マニアックな単語から覚えていきました。


2009年8月26日 <<前へ  次へ>>