「キムさん、日本で一番おいしい寿司屋に連れて行きますよ。
ここは、オヤジさんのポリシーで
雑誌等には絶対に載らない店ですから。」
と言って私を誘ってくれたのは、
人材派遣事業のお客様でもある大阪のフラワー
という会社の植松社長でした。
(関西で有名な「マダムヨーコ」
というスイーツを出しているあの会社です。)
そんなこと言われれば、誰だっていきたくなりますよね。
ほんと、社長というのは、経営手腕だけでなく、
口も一流の人が多いものです。(笑)
確かにその店は、大阪のとある地域の裏通り、
看板もあるんだかないんだかという店構えで、
暖簾をくぐると、カウンター席が7、8席、
そして奥に座敷の部屋が1つだけの小さな店でした。
前半から、もう新鮮でおいしい海鮮は、
中国の内陸の地で海鮮飢えしている私の口には、
あまりに刺激的過ぎて、
まるで芸能人のグルメレポートみたいに、首を傾げては、
眉をひそめ(あまりの美味しさに、
普段美味しい時と反対のリアクションをとってしまった)、
言葉は「あ~」しか出ない私でした。
極め付きは、鰹のたたきでした。
「キムさん、ここの鰹のたたきはちょっと変わってるんですよ、
見に行きますか?」と植松さんが聞いた時に、
既に私の腰は浮いておりました。
急ぎ足で店の外に出ると、小さなドラム缶の中で、
鉄串二本に鰹を刺して、
ボーボーと火の中をくぐらしているその最中でした。
あまりの火力の強さに、
「焦げませんか?」と聞く私に、
店主のおじさま(いや、おじいさまだろうか?)は、
「本来鰹のたたきを美味しく食べるには、
強い火力で短時間に表面を焦がす必要があるんやけど、
最近はみなさんガスバーナーで焼いてますやろ。
あれじゃ~ホンマは美味しいたたきはでけへんのです。
こうやって、麦わらをつこ~て、
ジャッっと焼かんとあきまへんのや。」
と言うそばから、麦わらを追加でばさっと入れて、
ゴゥッと火を焚いては鰹を焦がしていました。
そして、「このまま食べたらうまいで~。食べてみる?」
とカウンターの中に入って、
何もつけずに切ってくれたそのたたきは、
確かに、これまで食べたことのない
麦の香ばしさが口いっぱいに広がる味でした。
その後、間髪いれずに出てきたトロは、
「ここのトロはね、筋がないんです。
なぜかと言うと、
普通は筋と直角に切るんですけど、ここは筋と並行に切るんです。
すると、まったく筋の入らないトロがでけるんですわ。」
という説明を聞き終わる前に口にいれたトロは、
本当に口の中でゆるゆるになって、
筋の口触りがないままフィニッシュする
これまた人生初の食感でした。
大変なご馳走を頂いて店を出た後、
なぜだか「頑張っていこか~」と大阪弁でやる気に溢れ、
少し遠い道なりを歩いて帰る自分がおりました。
ps
キムのグルメレポートは、連載にはなりませんので悪しからず。
どうぞ皆さん美味い店をご紹介くださいませ。
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