美味い物を知ること、美味い物を食う事を大切にする、
というコラムを書きましたが、
実は、昨年から今年にかけて食べ続けてわかった事があります。
レストラン事業においては、美味い事が企業成功の十分条件ではない。
当たり前のように聞こえるでしょうね。
でも、もっと言いますと、成功の必要条件でもないのです。
つまり、不味くてもいいんです。
私は、食物を提供する仕事をする中で、
美味い物を提供することを心がけ、
そしてそれを心の中では使命ともしてきました。
すると、極端に言うと、不味い物を馬鹿にするようになります。
(いい事ではないですよ。)
だから、世の中でちょっと流行っている店に
視察なんかに行ったりして、美味くないと思うと、
生意気にも「不味いから参考にする点がない。」
などといって踏ん反り返ったりしました。
しかし、流行っている店の視察を続ける内に・・・、
不味くても流行ってる店がいくつもあるんです。
最初は、腹立たしいので見ないフリを決め込んでいましたが、
件数を重ねるうちに無視出来なくなってきて片目を開いて、
そのうちどうしても納得いかなくて
両目でしっかりと観察するようになりました。
具体名をあげると支障があるでしょうから言いませんが、
それは中国にも、台湾にも、はたまた日本にもありました。
特に、「こりゃないでしょ。」と私をトコトン混乱に落とし入れ、
一晩考え込ませたのが、
台湾の中心にある、カジュアルイタリアンでした。
前菜はちょっと冗談かと思ったんですが、
パスタ、メインの魚に至るとそのまずさには、文字通り閉口。
たまらず、ワインを頼もうとすると、
「すみません、ワインはおいてありません。」
「???」
「イタリアンだろ?」
生まれて初めて
ワインを置いていないイタリアンレストランに出会いました。
周りを見渡すと、お洒落な女性たちがわんさか楽しそうに食事をしている。
その中で一人しかめっ面をしている俺は一体なんなんだ?
完全に私の頭は制御不能状態に陥りました。
(つづく)
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