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264.不味くて最高な店

美味い物を知ること、美味い物を食う事を大切にする、
というコラムを書きましたが、
実は、昨年から今年にかけて食べ続けてわかった事があります。

レストラン事業においては、美味い事が企業成功の十分条件ではない。

当たり前のように聞こえるでしょうね。

でも、もっと言いますと、成功の必要条件でもないのです。

つまり、不味くてもいいんです。

私は、食物を提供する仕事をする中で、
美味い物を提供することを心がけ、
そしてそれを心の中では使命ともしてきました。
すると、極端に言うと、不味い物を馬鹿にするようになります。
(いい事ではないですよ。)

だから、世の中でちょっと流行っている店に
視察なんかに行ったりして、美味くないと思うと、
生意気にも「不味いから参考にする点がない。」
などといって踏ん反り返ったりしました。

しかし、流行っている店の視察を続ける内に・・・、
不味くても流行ってる店がいくつもあるんです。

最初は、腹立たしいので見ないフリを決め込んでいましたが、
件数を重ねるうちに無視出来なくなってきて片目を開いて、
そのうちどうしても納得いかなくて
両目でしっかりと観察するようになりました。

具体名をあげると支障があるでしょうから言いませんが、
それは中国にも、台湾にも、はたまた日本にもありました。
特に、「こりゃないでしょ。」と私をトコトン混乱に落とし入れ、
一晩考え込ませたのが、
台湾の中心にある、カジュアルイタリアンでした。

前菜はちょっと冗談かと思ったんですが、
パスタ、メインの魚に至るとそのまずさには、文字通り閉口。

たまらず、ワインを頼もうとすると、

「すみません、ワインはおいてありません。」
「???」
「イタリアンだろ?」

生まれて初めて
ワインを置いていないイタリアンレストランに出会いました。

周りを見渡すと、お洒落な女性たちがわんさか楽しそうに食事をしている。

その中で一人しかめっ面をしている俺は一体なんなんだ?

完全に私の頭は制御不能状態に陥りました。

(つづく)


2012年4月16日(月)

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