私のコラムのちょうど上の段で
マナーに関するコラムが始まったようで、
私もマナーについて改めて意識していたところ、
先日ちょっと感動することがありました。
人間のマナーというか品位についてです。
その日は、私の直属のボス(台湾人です)と
北京に出張にいっていました。
タクシーの中でたわいもない会話をしていたところ、
そのボスが突然、
「このマンションきれいですね。
1平米3万元(約45万円)ぐらいらしいですよ。」
と言いました。
値段までやけに詳しいことを不思議に思い
「どうしてそんなに詳しいんですか?」と聞いたところ
「昔このマンション、
台湾の友人に一緒に買おうといわれたんですよ。
彼に知り合いがいて特に安く買えたようだし、
(値段が)上がることはわかっていましたからね。
当時は3千元(約4万5千円)ちょっとでしたよ。」
「え?じゃあ、買ったんですね。」
「いえ、買いませんでしたよ。」
「なぜですか?」
「だって、その当時は、先生が三全公寓
(邱先生が北京に建てた高級サービスアパートメント)を
造っている途中で、まだ、先生の部屋も買っていなかったから。」
「・・・」
私は、この話を通じてなぜ私のボスが成功しているのか、
よくわかりました。
彼は、“ただ”
まだ先生の部屋を買っていないからという理由だけで、
目の前のちょっとした金の卵に手を出さなかったわけです。
言い換えれば、
“先生が一生懸命アパートメントをつくっているそばで
儲かるからという理由で
すぐ横のマンションを私が購入したら気分が悪いでしょ。”
ということです。
マナーや人間の品位を考えるに当たり、その本質は、
相手がそれをどう感じるか
という一点につきるはずです。
そしてその原則的な判断基準は
それが相手に見えているかどうかに関わらず
なのです。
きっと私のボスも、
邱先生に黙ってこっそりそのマンションを買っていれば
10倍になっていたわけです。
邱先生はきっとこのことを知らないはずです。
でもそのボスにとっては、
このことを邱先生が知ろうと知るまいと、
人間としての品位やマナーを優先しているわけです。
きっと、このマンションの件だけでなく、
そうやってすでに何十年も過ごしてきたはずです。
なんでもかんでも話をマネーに関連付けて話す必要はありません。
しかし、精神的にそして経済的に成功した人間には、
かならず理由があります。
その1つがマナー(品位)を大切にして生きることだ、
と改めて感じ取ったほんの1・2分の出来事でした。
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