■柳田洋・北京からの画像便り No.363 ■


中華民族的伝統美徳
写真は地下鉄のLED表示に流れていた文字です。
「中華民族的伝統美徳」に従って、
老人や障害者、妊婦の人たちには席を譲りましょう、
というお知らせです。
この表示はバスの中でも流されています。
「あなたたち席を譲らなきゃダメですよ!」
と頭ごなしに命令するのではなくて、
「誇り高き中華民族なら、その伝統的な美徳に従って
席を譲りましょうね」という
人々のプライドをくすぐるようなアプローチ。
さすがは、大衆の心の操縦術を知り尽くしている
中国共産党です。
この方法を応用すれば、他の公衆マナーや、
交通道徳も劇的に改善させることが
できるのではないでしょうか。
しかし、「弱者に席を譲る」という点では、
「中華民族的伝統美徳」という言い方も
あながちウソではありません。
北京では地下鉄でもバスでも
老人や妊婦が乗ってきたら、
いわゆるシルバーシートでなくても
みんな当たり前のように積極的に席を譲ります。
一方、ルールに厳格な日本では、
みなさんシルバーシートは譲りますが、
一般座席を譲る人はあまり見かけません。
私も日本で働いていた時には疲れていて、
30分でも座って寝たい方でしたので、
譲らない人の気持ちは痛いほどわかるのですが、
中国で「弱者には無条件で席を譲る」という
「中華民族的伝統美徳」を目の当たりにすると、
やはり「日本もこんな感じになったらいいなぁ」
と思ってしまいます。

撮影日:2009年9月28日(月)
撮影:柳田洋


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