■柳田洋・北京からの画像便り No.340 ■


人だかり

先日、道を歩いていたら、
写真のような人だかりができていました。
「何だ、何だ!?
人でも倒れてるのか!?」
と思いきや、人だかりの真ん中には、
象棋(しゃんちー、中国将棋)を指すおじさんが2人。
人だかりは象棋を見物する
ギャラリーの人たちなのでした。
しかし、このギャラリーの人たち、
黙って見物しているだけではありません。
通りがかりで全く知り合いでも何でもないのに、
おじさんたちが一手打つたびに、
「いやー、そこは砲(ぱお)だろー」とか、
「攻め込んだ方がいいんじゃないのー」などと
いちいち口を出します。
口を出されたおじさんたちも、
「そんなのしょうがないだろう」などと反撃して、
みなさん結構楽しそうです。
象棋見物は日曜午後の昼下がりの、
カネのかからない庶民の娯楽なのです。
中国では高度経済成長により、
残業や休日出勤も厭わないモーレツ社員が増え、
「カネで時間を買う」という人も出てきてはいますが、
それでも圧倒的多数の庶民は、
「カネはないが時間はいくらでもある」人たちです。
そうした庶民は常に「カネのかからない娯楽」を
渇望していますので、不謹慎な話ではありますが、
交通事故やケンカがあると、
すぐに数十人の野次馬が集まって来て、
いつまでも見物しています。
中国でこうした圧倒的多数の庶民に娯楽を提供して
おカネを払ってもらえるようになるまでには、
まだまだ長い時間がかかりそうです。

撮影日:2009年4月26日(日)
撮影:柳田洋


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