第1529回
「茅台」を現金化する人たち
「値段が上がるモノだったら、何でも買いたい」
中国ではこう考える人が多いため、
今まで様々なモノの値段が乱高下してきました。
不動産、金銀プラチナ、石炭、ワイン、美術品、
ニンニク、トウガラシなどなど。
そして、今年に入ってからはそうした投機資金は、
高級白酒(ばいじょう)「茅台(まおたい)」に向かいました。
「茅台」は中国貴州省の北西部、
仁懐市茅台鎮で産出される醤香型の白酒で、
強い芳香が特徴の名酒です。
毛沢東主席がアメリカのニクソン大統領をもてなしたときや、
周恩来首相が日本の田中角栄首相を接待したときにも飲まれ、
名実ともに「国酒(ぐおじょう)」と呼ぶにふさわしい、
中国を代表するお酒です。
この「茅台」、以前は
1本1000元(1万2500円)前後だったのですが、
投機資金の流入により過去2年間で価格が高騰、
今年初めには2倍の2000元(2万5000円)を
超えることもあったのだそうです。
しかし、最近は政府による厳格な価格統制が行われたり、
公費による高級酒消費が禁止されたりしたことから
投機で買っていた人たちが低価格で在庫の放出を始め、
北京での販売価格は今年の春節前の
1800元(2万2500円)から400元(5000円)、
率にして22%下がって1400元(1万7500円)にまで
落ち着いてきたようです。
中国には高級酒の二次マーケットがあります。
このため、白酒メーカーが定価を変えなくても、
マーケット価格が形成されます。
まず、白酒メーカーが
直売店やデパートで売った白酒がプレゼントに使われます。
そして、それをもらったエラい人が
近所の白酒買取屋で現金化し、
その買い取られた白酒はまた白酒販売店に並ぶのです。
このため、北京の街を歩いていると
「高級白酒、高値で買い取ります」という看板を掲げた
買取屋をたくさん見ることができます。
中国では高級白酒は、
ワイロの授受を現ナマで行ってしまうと
手が後ろに回ってしまう人たちのための価値を表す記号、
日本のパチンコ業界における
ライター石のような存在なのです。
しかし、白酒を愛する人たちの集まりである
北京白酒会の会長を務める私に言わせれば、
これは白酒に対する冒涜以外の何物でもありません。
これではせっかくおいしく飲んでもらうために生まれてきた
白酒がかわいそうです。
現金化できる価値を表す記号は
ライター石やペンダントを使って頂き、
飲まれるために生まれてきた白酒は
ぜひおいしく飲んでもらいたいものだと思います。
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