第1517回
不法入国する国からされる国になった中国

先日、北京の日本大使館から
「外出するときには、必ず有効なビザがある
パスポートを携帯するようにしてください」
という注意喚起のお知らせが来ました。

基本的に中国に住む外国人は全員、
常にパスポートを携帯していなければ
いけないことになっているのですが、
この注意喚起は、北京市公安局が
先月から8月末まで実施すると発表した、
不法滞在外国人の集中取締りに対応したものと思われます。

中国では経済発展に伴い、
居住する外国人の数も急増しています。
そして同時に、一部の外国人による犯罪や
違法活動の問題も深刻化しています。

今回の北京市公安局の集中取締りは、
そうした犯罪や違法活動を起こしやすい
「三非外国人(さんふぇいわいぐおれん)」、
つまり、非法入境(不法入国)、
非法居留(不法滞在)、
非法就業(不法就労)

3つの「非」をしている外国人を一掃して、
治安の回復を目指すことなのでしょう。

昨年2011年に
中国で摘発された「三非外国人」は2万人以上。
彼らの出身国は主に中国と国境を接する国で、
比較的取得しやすい留学生ビザで入国し、
その後、服務員、ショービジネス、家事などの
肉体労働の仕事で不法就労している人が多いそうです。
中国は肉体労働をする外国人にはビザを発給しませんので、
彼らが中国に来て肉体労働の職を得ようとすれば、
必然的に不法就労になってしまうようです。

今まで、中国がらみで不法入国や不法就労というと、
中国人が日本を始めとする先進国に不法入国して、
そこで不法就労をする、というのが一般的でした。
しかし、最近の中国では、
経済成長により肉体労働者の労働力が不足、
不景気にあえぐ周辺国から職を求めて
不法入国者が中国に集まるようになったようです。

不法入国する国からされる国になった中国。

問題は今まで貧乏で
不法入国してくる人がほとんどいなかったため、
中国には不法入国者の身柄を拘束し、
取り調べを行った上で本国に強制送還する
専門の施設がないことです。
また、その代替となる各地の拘置所でも、
外国語ができる職員の数が圧倒的に不足しており、
増加する不法入国者に全く対応できていないようです。

昔の貧乏な中国を知っている私からみれば、
「中国も不法入国されるまでになったか」
という感慨もひときわですが、
「三非外国人」を取り締まっている現場の人たちは
それどころではないようです。





←前回記事へ

2012年6月25日(月)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ