第1516回
「最も美しい女性教師」
先月、中国共産党機関紙・人民日報の一面に、
「最も美しい女性教師」という記事が掲載されました。
日本でも最近は 「美人すぎる市議会議員」とか
「美しすぎるアスリート」など、
美しいことを職業にしていない美しい人が
注目されることが増えてきましたが、
人民日報が言う「最も美しい女性教師」とは
その容姿が美しいわけではなく、
<心が美しい>女性教師という意味です。
取り上げられたのは
黒龍江省佳木斯(じゃむす)市の中学校で
国語を教える20代後半の女性教師・張麗莉さんです。
彼女は中学校の校門前で
急発進したバスにひかれそうになった生徒2人を
とっさに突き飛ばし自分がバスの下敷きになり、
両足を切断する重傷を負いました。
人民日報の報道によれば、
張さんは月給が1000元(1万3,000円)で
自分の生活も苦しいのに、
その内の100元(1,300円)を毎月、
生活が苦しい生徒の就学のために
寄付していたのだそうです。
この張さんの自己犠牲的な行為に対し、
中国共産党指導部も
宣伝担当の李長春政治局常務委員と
教育担当の劉延東国務委員が
見舞いと敬意の言葉を送りました。
中国共産党は今年春以来、
毛主席時代に自己犠牲的な行為で模範兵士となった
雷鋒(れいふぉん)を讃える運動を展開し、
「冷漠社会(るんもーしゃーほい)」と呼ばれる
個人主義的な世の中の風潮を戒めています。
今回の「最も美しい女性教師」報道も、
そのプロパガンダの一環として片付けてしまえば
それで終わりなのですが、
心が美しい人に「最も美しい」の称号を与える
中国共産党の考え方に
今の日本が学べるところも
あるのではないかと私は思います。
「宮里藍は14番で林に打ち込みダブルボギー。
その後、スコアを崩し15位に終わりました」
「横峯さくらはパットが決まらず、3連続ボギー。
9位タイという不本意な結果に終わりました」
と延々と下位に終わった美人選手の解説を続け、
最後につけたしのように
「ちなみに優勝したのは不動裕里でした」
の一言で終わるような報道に、
私は以前から違和感を覚えていました。
テレビ局からしてみれば、
視聴者が知りたいと思う情報を多く流しているだけだ、
ということなのでしょうが、
ゴルフに限らず、日本のテレビはこうした
美男美女を必要以上に高く評価する価値観を、
国民に植え付けようとしているように見えます。
美男美女の人たちを見ていたい気持ちはわかります。
しかし、日本でも容姿の美しさだけではなく、
心の美しさやその人のプロとしての実力が
もっと賞賛されるようになればよいな、と
今回の「最も美しい女性教師」の報道を見て思いました。
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