第1515回
14歳の大学生を生む「神童クラス」
先月、北京市第8中学の
「神童クラス」の入学試験が行われました。
中国の中学校は
日本の中学校に当たる初中(ちゅーちょん)と
日本の高校に当たる高中(がおちょん)の
中高6年間一貫教育を行う教育機関ですが、
この「神童クラス」の入学試験の対象者は小学4年生です。
当日は30人の枠に応募した1200人以上の小学4年生が、
国語、算数、思考の3科目の試験を受けました。
この40倍以上の狭き門を突破した30人の子供たちは、
小学5、6年、中学、高校の合計8年間のカリキュラムを
4年間で終わらせ、大学受験をするのだそうです。
この「神童クラス」は今まで13年間で
400名以上の卒業生を輩出してきたのですが、
14歳、通常なら中学2年生の子供たちが
18歳の高校3年生と一緒に受ける
高考(がおかお、中国大学統一試験)の平均点数は、
北京市の名門大学の理科系の合格ラインを
750点満点で120点も上回っているのだそうです。
子供の将来の高学歴がほぼ保証される「神童クラス」への入学。
しかし、14歳で名門大学に入ることが良いことなのか、
というと、私は首をかしげてしまいます。
このニュースを聞いて思い出したのは、
日本の教育企業・ベネッセの中国進出当初の悩みです。
ベネッセは就学前児童教育用の教材
「こどもちゃれんじ」の中国版
「楽智小天地(るぁぢーしゃおてぃえんでぃー)」を
中国で販売しています。
この「楽智小天地」、子供の年齢別に
3−4歳用、4−5歳用、5−6歳用と分かれているのですが、
中国の親たちは、3−4歳児には4−5歳用を、
4−5歳児には5−6歳用を与えてしまうのだそうです。
ベネッセはそれぞれの年齢の子供の
発育状況に合わせて内容を決めているのですが、
自分の子供に英才教育をしたい中国の親たちは、
実際の年齢よりも高度な教材を
与えたがる傾向があるのだそうです。
こうした子供の実際の年齢よりも
高い教育を受けさせたがる親の心理は、
1つは子供の将来のために
高い学歴を持たせてやりたいという親心、
もう1つは「うちの静静ちゃんは、
4歳なのに5−6歳用の教材でお勉強してますのよ」とか
「我が家の偉偉くんは、14歳なのに
飛び級でもう大学生なんだよ」などと自慢したい
虚栄心なのではないかと思います。
中国の子供の数は一人っ子政策の影響で
どんどん減っていますが、
受験戦争、特に重点大学と呼ばれる
名門大学に入るための競争は
逆にますます過熱しています。
こうした激しい競争が次世代のエリートを生み出し、
今後、中国の国力をさらに押し上げていくであろうことは
想像に難くありませんが、
あまりに先を急ぎすぎて、
まったく遊びのない勉強一色の青春時代を過ごした人たちが、
本当に幸せな人生を送れるのかどうかは
疑問なのではないかと思います。
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