第1514回
北京市の水不足解消法
北京ではあまり雨が降りません。
空気も非常に乾燥しています。
中国の地図を見ると、
北京は海からほど近いところに位置しているように見えますが、
これは中国の国土があまりに大きいためであり、
実際は一番近い天津の海まででも約150km、
逆に一番近い砂漠までは約80kmほどとのことですので、
北京は内陸の乾燥気候の都市である、と言うことができます。
一方で北京市の2000万人の市民が使用する水の量は
年間25億立方メートルに達しています。
北京市の飲料水を供給する2つのダムの貯水量は
合計約12億立方メートルとのことですので、
いかに水不足であるかがわかります。
では、北京市は足りない水をどうやって調達しているのか?
1つは「地下水のくみ上げ」。
2つ目は「周囲の省から融通してもらう水」です。
今年からは従来の供給源に加えて、
河北省の4つのダム、山西省の2つのダムから
水を融通してもらうことになったのだそうです。
3つ目は「黄河の水」。
今年は新たに黄河の水を毎年3億立方メートル、
河北省張家口市にある官庁ダムを経由して、
供給してもらうことになりました。
そして4つ目は「海水を淡水化」したもの。
今年、河北省唐山市曹妃甸の
海水淡水化プロジェクトが操業を開始、
飲用に適した水質の水を供給できるようになりました。
海水の淡水化にはトン当たり8元(104円)の
コストがかかるそうなのですが、
半分は行政が負担し、北京市の水道料金は半額の
トン当たり4元(52円)に据え置かれるのだそうです。
様々な方法で足りない水を調達しなければならない北京市。
北京市の人口がこれ以上増えれば、
水が足りなくなって断水が多発したり、
水を飲めなくなる人が発生するのは
火を見るより明らかです。
そう考えると、
中国政府が世界的に悪名高い戸籍制度で、
農村住民の都市への流入を抑えようとする気持ちも
わからないではありません。
では、上記の方法をすべて使っても
北京市の水の需要に供給が追いつかない場合はどうするのか?
5つ目の切り札が「南水北調」です。
「南水北調」とは南部の水を北部へ送る
中国の国家プロジェクトです。
具体的には、長江の上流、中流、下流から取水し、
西ルート、中央ルート、東ルートの3本の水路を掘って、
中国北部の水不足の地域に水を供給する、というものです。
このうち、北京市まで来るのは、
長江中流の支流である漢江の湖北省丹江口ダムから取水して、
河南省、河北省を経由する中央ルート、全長1246kmです。
2003年に着工した中央ルートは
10年間の工事を経て来年2013年に完成、
2014年に送水が始まると
年間10億立方メートルの水を北京市に供給することになり、
北京市の水不足が一気に解消されることが期待されています。
水資源が豊かな日本に住んでいるときには
全く意識していませんでしたが、
水不足の北京に住んでいると、
水が非常に貴重な資源であることを強く感じます。
そんな貴重な水資源、
大切に使いながら「南水北調」プロジェクトの完工で
北京市の水不足が解消する日を待ちたいと思います。
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