第1511回
国有企業幹部に公費濫用禁止令発令!
先日、中国財政部は監察部など3省庁と合同で、
国有企業の幹部に対し事務所・ビルの豪華な内装や
公費による高級レジャー消費などを禁止する
12項目の通達を出しました。
通達によれば、経営する国有企業が赤字である場合、
高級車の購入、公費での保養施設・
スポーツジム・会員制クラブの利用、
公費での個人住宅購入・内装・管理費の支払いなどを
厳しく取り締まるのだそうです。
そして、違反があった場合は、
規律検査部門がその国有企業責任者を厳しく追及し、
問題がある場合には司法機関に送致する、とのことです。
こんな当たり前のことについて、
中国政府の3つの省庁が
合同で通達を出さなければならないのは、
こうした行為が国有企業の間で
横行しているからにほかなりません。
国民から徴収した税金を資本金とする国有企業の幹部が、
赤字なのに会社のカネを使って贅沢のし放題など、
とんでもないにもほどがあります。
この問題の背景には、
大きな権限の割には低い国有企業幹部の給料
という矛盾があります。
国有資産監督管理委員会の発表によれば、
国有企業幹部の年収は
平均で60万元(780万円)とのことです。
そして、数ある国有企業の中で最も高い報酬をもらっている
携帯電話最大手・中国移動の王建宙総裁でも、
その年収は133万元(1,730万円)なのだそうです。
そしてさらに、平均60万元の年収のうち、
2/3は企業業績に連動したボーナス部分であるとのことです。
順調な経済成長と最近の国有企業の業績好調により、
ボーナスが平均で40万元(520万円)も出ているわけですが、
赤字国有企業の幹部には当然、
業績連動のボーナスは出ませんので、
そうした国有企業幹部の年収は
20万元(260万円)程度しかないものと思われます。
何十年にもわたる社内の競争に打ち勝って
やっと幹部になったのに、
年収が日本の新入社員と同じぐらいでは
苦労のし甲斐がありません。
しかし一方で、年間数億元(数十億円)に及ぶ
会社の仕入をどこからするかを最終的に決定したり、
年間数千万元(数億円)に及ぶ
会社の経費の使い道を決定したりできる
大きな権限を与えられていることに気付き、
国有企業の幹部は仕入先からワイロを受け取ったり、
会社の経費で高級車や住宅を
買うようになってしまうのでしょう。
国有企業の幹部は中国共産党の幹部でもありますから、
人民の感情を逆なでしないように
給料を低く抑えなければならないのはわかります。
しかし、この低い給料が皮肉にも逆に
人民が最も忌み嫌う腐敗の温床になってしまっているのです。
中国政府は安月給の国有企業幹部を取り締まるのもよいですが、
今後、彼らの腐敗を撲滅するためには、
能力のある人材にそれ相応の高い報酬を与え、
「この高収入を手放さなければならないリスクがあるのなら、
危ない橋は渡らない」と思わせるような、
抜本的な対策が必要なのではないかと思います。
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