第1500回
3通に1通は届かない中国の郵便
先日、中国国営の中国中央電視台(CCTV)は、
中国国内で投函した普通郵便のうち、
33%が届かなかったという調査結果を発表しました。
CCTVは受取先別に実際に計100通の普通郵便を投函、
受取人にきちんと届いたのは、
北京市や上海市などの直轄市と各省の省都宛で82.3%、
市レベルの地方都市宛で52%、農村宛で66.7%、
海外宛で50%で、全体では67%にとどまりました。
記者は届かなかった33通について追跡取材を行いましたが、
投函後20日以上が経過しても、
受取人に届くことはなかったそうです。
CCTVを始めとする中国の国営メディアは、
中国共産党の批判だけはできませんが、
それ以外のことについては、
社会に問題を提起する結構良い仕事をすることがあります。
今回の報道も、実際に普通郵便を投函して、
その到達率の低さから、
中国郵政の仕事のいい加減さをあぶり出す、という
ジャーナリスト魂を感じさせるものでした。
3通に1通は届かない中国の郵便。
中国の郵便事業は、
国営の中国郵政が独占していますので、
競争の原理がまったく働きません。
このため、いくらいい加減な仕事をしても、
利用者は他に選択肢がありませんので、
最終的には中国郵政を使わざるを得ません。
その結果、中国の郵便事業は
3通に1通は届かないというところまで
堕落してしまったのでしょう。
一方、最近、ネット販売の普及によって
小包の分野で大きくシェアを伸ばしているのが、
快逓(くぁいでぃー)と呼ばれる宅配便です。
この快逓の業界には多くの民間企業が参入しているのですが、
中国郵政の普通郵便の小包と違って、
荷物の現在位置を追跡できますので
紛失事故がほとんど起こりませんし、
中国郵政が運営している
追跡可能な小包サービス・EMSと比べると、
はるかに安い料金で運んでくれます。
まさに競争の原理が働いたことによる、
サービスの向上と料金の低下で、
利用者にとっては非常にありがたいことなのですが、
この快逓、はがきや封書の分野には
まだ参入を許されていないようです。
日本の郵便事業は郵政省が独占していた時代でも、
3通に1通は届かない、などという
ひどい事態には陥りませんでしたが、
それでも規制緩和により民間の宅配便の会社が
メール便を送れるようになりました。
中国の次期政権の課題は、
一言で言うと「官から民へ」です。
官から権限を剥奪して腐敗の温床を取り払うと同時に、
民の力を利用して経済成長を続け、
来るべき労働力人口の減少、
高齢化社会の到来に備えることです。
そうした中国政府の方針と、
中国郵政のこの体たらくを考えると、
中国の郵便事業の規制が緩和され、
民間の快逓の会社が
はがきや封書の分野に参入する日が来るのも、
そう遠くはないのかもしれません。
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