第1499回
胡錦濤院政の始まり
中国共産党中央政治局常務委員会の9つの椅子。
2つはもう既に座っている習近平氏と李克強氏。
残りの7つは今年秋の党大会で引退しない
若手政治局委員9人のうち、失脚した薄熙来氏と
新たに重慶市党委書記兼任となった張徳江氏を除いた7人、
すなわち、王岐山、劉雲山、劉延東、李源潮、
汪洋、張高麗、俞正声の7氏で分けるとなれば、
もう権力闘争をする必要はないではないか、
と思われるかもしれませんが、
中国共産党内部の権力構造はそんなに単純ではなさそうです。
なぜなら、表向きは政治局常務委員会の9人の合議で
中国の政策が決定されることになっていますが、
9人の後ろにはそれぞれ大きな影響力を持つ権力者がいて、
自らの考えを国政に反映させ続けようとしているからです。
「厚くない人」のようなスタンドプレーばかりしている
時代錯誤な左派のトリックスターは、
太子党とか江派とか以前の問題として、
政治局常務委員会全会一致で
排除が決定されたと言われていますが、
最近、網民(わんみん、ネット市民)の間で話題になったのは、
現役政治局常務委員である「カップ麺」の失脚説です。
「カップ麺」こと康師傅、
いや、周永康・党中央政法委員会書記は、
江沢民氏の姪を妻に持つ完全な江派。
次期政権での江派の影響力を極力排除しておきたい「古月」が、
その「カップ麺」を「迷彩服」の支持をバックに
追い落としを図ったのではないか、と言われています。
今年3月末、微博(うぇいぼー、マイクロブログ)において
「北京でクーデター発生」というデマを流した容疑で
6人が逮捕されましたが、
そうしたデマが信憑性を伴って広がったのは、
窮鼠が猫をかむ、
つまり、失脚させられそうになった「カップ麺」が
思い余って「古月」に対してクーデターを試みる、という筋書きが、
それほど不自然なことでもなかったから
なのではないかと思います。
今年秋の中国共産党全国代表大会(党大会)での引退後も、
権力の維持を図ろうとしている胡錦濤総書記と団派。
考えてみれば、前任の江沢民氏が院政を目論んだため、
胡錦濤総書記が人民解放軍を掌握して
ようやく自分の政治ができるようになったのは
2期目の2007年からです。
そういった意味では、2012年から2017年の5年間は、
習近平政権の1期目、というよりは、
胡錦濤院政期と呼んだ方がふさわしい政治が
展開されるのでしょう。
今のところ、上記の政治局常務委員候補の中では、
李克強、李源潮、汪洋、劉延東の4氏が団派と言われています。
しかし、もしかすると、秋の党大会までに、
胡錦濤総書記は絶好調の権勢を背景に
この4人以外の候補をもう1人失脚させて、
2022年の党総書記最有力候補と言われる第6世代のホープ、
胡春華・内モンゴル自治区党委書記を
2階級特進で政治局常務委員に据え、
常務委員会の多数決で団派が絶対に負けない体制を築く、
という荒業を見せてくれるかもしれません。
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