第1475回
ぼったくりにも三分の理
値段を明示せず、後で高額な請求をするぼったくり。
さすがの中国でもこうしたぼったくりは違法ですので、
前回お話ししたようなぼったくりが発覚した店は
例外無く営業停止の処分を受けています。
しかし、値段を明示していても
「これはちょっとぼったくりなんじゃないの?」と思えるような、
とんでもない値段が付いているケースも中国ではよくあります。
その典型的な例がホテルです。
1−2月の春節や10月の国慶節など大型連休のときには、
中国ではたくさんの人が旅行に出かけます。
すると、中国のホテルはいくら値段を上げても
お客さんの予約が入るので、
普段、1泊500元(6,000円)で泊まれるホテルが
1泊3000元(3万6,000円)とか5000元(6万円)という
法外な値段を付けるようになります。
中国には「物価局(うーじゃーじゅぃー)」という、
消費者の弱みに付け込んで値段を吊り上げる会社を
厳しく取り締まる役所がありますので、
大型連休のときに法外な値段を付けるホテルが
摘発されてもおかしくないと思うのですが、
こうしたホテルは取り締まられる気配もありません。
不思議に思ってホテル関係者の友人に訊いてみたところ、
多くのホテルの定価は最初から
1泊3000元とか5000元に設定されており、
普段はお客さんが少ないので、
仕方なく8割引とか9割引で提供しているのだ、
とのことでした。
大型連休で宿泊価格が高騰するホテルは、
ぼったくっているわけではなくて、
普段やっている割引を無くして定価で売っているだけなので、
物価局に摘発されない、ということのようです。
また、ぼったくりと言えば、
私が中国ビジネスの交渉術を学ばせて頂いた
北京のニセモノ市場「秀水街(しゅうすいじえ)」に
出店している人たちも、
最終的に50元(600円)で買えるモノに、
最初は500元(6,000円)という値段を付けたりします。
日本から来た人の中には
「アイツ、オレからぼったくろうとしやがった!」
などと憤慨する人もいるのですが、
お店の人が最初から50元で売らないのは、
もしかしたらお客さんの中にはこの商品に
500元の価値を見出す人がいるかもしれないからです。
消費者はぼったくる、ぼったくられるではなく、
自分が「この商品にはこれだけの価値がある」
と思った金額を冷静にお店の人に提示して、
お店の人が「その値段では売れない」ということであれば、
縁が無かったと思って店を出ればよいだけの話なのです。
「定価」で買うことに慣れている私たち日本人から見ると、
一見、とんでもないぼったくりに見える
中国のホテルと「秀水街」。
しかし、その背景にある事情を知れば、
彼らにもそれぞれ「三分の理」があることがわかるのです。
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