第1473回
中国政府が見守る社会保障と税の一体改革
消費税増税が待ったなしの日本。
民主党政権は社会保障と税の一体改革と称して、
将来的な社会保障財源確保のため、
2015年10月までに現在5%の消費税を
10%に引き上げる政策を決定、
2013年8月までに行われる衆議院議員選挙で
民意を問おうとしています。
これは中国にとっても他人事ではありません。
なぜなら、今から28年後の2040年、
中国の65歳以上の高齢者人口は3億人を超え、
全人口に占める高齢者の割合は、
今の日本とほぼ同じ21.8%に達することが
予想されているからです。
28年後で高齢者比率が今の日本と同じならば、
何も焦ることはないじゃないか、
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
現状、中国で年金をもらえるのは、
2億人の農民工を除いた4.5億人の都市住民だけで、
全人口の2/3を占める8.5億人の
農村戸籍の人たちには年金制度自体がありません。
中国の社会保障制度整備は日本と違って
大幅なマイナスからのスタートなのです。
私は以前、中国の農家にホームステイをさせて頂いたときに、
農家のご主人に、社会保障制度がない中で、
どうやって将来の安心を確保していくのか訊いてみました。
ご主人曰く、当面の生活の保障は、家の中に積み上げられた
6年分、5000元(6万円)相当の小麦の備蓄、
年金の代わりは働いて年老いた親を養ってくれる健康な息子、
しかし、医療保険の代わりは無いので、
大きな病気にかかったらそれが寿命だと思って諦める、
とのことでした。
こうした全人口の2/3を占める農村戸籍の人たちに、
全人口の1/3でしかない都市戸籍の人たちと同じ
社会保障を提供しようと思ったら、
単純に計算して今の3倍の社会保障費が必要となります。
ほとんど現金収入がない農民から、
社会保険料を徴収するわけにもいきませんので、
この費用を国庫から支出するとなれば、
巨額の財源が必要となります。
幸い、中国は日本の消費税に当たる増値税が
既に17%と高率ですし、
国家の債務も国内総生産(GDP)の20%前後と
日本の1/10に止まっています。
そして高度経済成長は終焉を迎えたと言っても、
今後も8%前後の中成長が続くことが予想されており、
3兆ドルに上る世界最大の外貨準備も蓄えています。
中国が来るべき高齢化社会に備えるとすれば、
まだ余裕がある今のうちしかありません。
今年1月に行われたダボス会議でも、
米エール大学のレビン学長が中国政府に対して
「中国は3兆ドルに上る外貨準備の一部を、
社会保障制度の改善に使うべきだ」
という提言をしました。
高齢化先進国である日本が行おうとしている
社会保障と税の一体改革。
中国政府も28年後の自国の姿を重ね合わせて、
その成り行きを固唾を呑んで
見守っているのではないでしょうか。
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