第1470回
中国5000年の歴史で初めての社会構造の変化
今、中国は5000年の歴史の中で初めてとなる
社会構造の変化を経験をしようとしています。
中国国家統計局の発表によれば、
昨年末時点での中国の総人口は13億4735万人でしたが、
都市人口が6億9079万人と、農村人口の6億5656万人を
上回ったとのことです。
都市人口が農村人口を上回るのは、
中国5000年の歴史の中で初めてのことなのだそうです。
今後、中国は5000年続いた農民国家を卒業して、
今まで経験したことのない都市住民国家としての道を
歩み始めるのです。
中国の都市人口が農村人口を上回った最大の要因は、
農村から都市に出稼ぎに来るいわゆる
「農民工(のんみんごん)」が増えたためです。
政府系研究機関・中国社会科学院によれば、
中国の「農民工」は2億2100万人に達し、
都市人口の3割以上を占めるのだそうです。
改革開放後30年あまりで
5000年の歴史を塗り替えた中国の急激な都市化は、
既に様々な弊害をもたらしています。
例えば、私が住んでいる北京市。
北京市の常住人口は昨年末時点で2018万6000人と
初めて2000万人を超えました。
10年前と比べると人口は600万人、
率にして40%以上も増加しています。
これだけ急激に人口が増えてしまうと、
当然、社会的なインフラの整備が追いつくわけもなく、
そのしわ寄せは全て、
人口の1/3を占める外地人(わいでぃーれん)、
つまり、北京市の外から移住してきた人に
行くことになります。
このため、農村から北京に出稼ぎに来た
農村戸籍の「農民工」は、
都市戸籍の北京市民とは違って、
年金、医療、教育などの公共サービスを
十分に受けることができません。
これが、世界的にも悪名が高い、
都市戸籍と農村戸籍を明確に分ける中国の戸籍制度ですが、
都市の税収にも限りがあることを考えれば、
農村から都市への急激な人口の流入を防いだり、
農村戸籍の人たちに公共サービスを
十分に提供できなかったりするのも、
全く理解できないことではありません。
40年前、
ここ北京で日本の田中角栄元首相が
中国の周恩来元首相とかたい握手を交わしました。
その田中元首相が主張したのが、
国土の均衡ある発展により、
過疎と過密の問題や公害の問題を解決する
「日本列島改造論」です。
当時の中国はまだ文化大革命の真っ最中でした。
しかし、中国はその後、
ケ小平氏の「先富論」に基づく改革開放政策で、
富むことができる者から先に富み、
現在の経済発展を成し遂げることに成功しました。
「先富論」は
「みんなで一緒に貧乏になることはできるが、
みんなで一緒に裕福になることはできない」
という認識の上に立っていますので、
現在の都市と農村の格差は既に織り込み済みです。
しかし、中国はそろそろ「日本列島改造論」ならぬ、
「中国大陸改造論」で国土の均衡ある発展を目指し、
特定の大都市に人口が集中して、
都市機能が破綻してしまうような事態を避けながら、
中国5000年の歴史の中で初めてとなる
都市住民国家へのスムーズな移行を
図っていくべきなのではないかと思います。
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