第1460回
試される中国の網民の胆力

中国共産党の腐敗党員を吊るし上げたり、
地方政府の無茶苦茶な行政を批判したりして、
中国の「ネット民主主義」化に大きな影響を及ぼしてきた
微博(うぇいぼー、マイクロブログ)。

この「微博」に中国政府が実名登録制度を導入したことにより、
今後、中国の「ネット民主主義」は
大きく後退してしまうのでしょうか。

私はそうは思いません。
なぜなら、実名登録制度を導入しても、
何万人もの人が自分が正しいと思ったことをつぶやき続ければ、
中国政府は全員を罰するわけにはいかないからです。

過去10年間の中国国民の最大の発見は、
「民衆を煽動する首謀者がいないにも関わらず、
参加者が1万人を超えたムーブメントは罰せられない」
ということです。
中国政府は首謀者に煽動されたわけでもなく、
自分の意思で意見を主張する1万人以上の人たちを
全員逮捕するわけにはいかないのです。

それはインターネット上の書き込みでも、
人民政府や公安局を襲う暴動でも、
市庁舎前での座り込みでもみんな同じです。
そしてそれらのムーブメントが、
「ネット民主主義」、「暴動民主主義」、
「静かなる抗議民主主義」といった
様々な形の民主主義を形作り、
中国政府を動かすまでの力を持つようになりました。

以前の中国では中国共産党は
逆らってはいけない絶対的な存在でした。
逆らえば、逮捕されて
人生を無茶苦茶にされてしまうだけではなく、
ひどいときには拷問をされて
命を落としてしまうことさえありました。

その恐怖から、中国国民は
杭に鎖でつながれた小象のように
おとなしく暮らしていましたが、
インターネットの普及により
国民に横のつながりができたおかげで、
正義のムーブメントは多くの賛同者を得て、
すぐに巨象のように膨れ上がるようになりました。

しばらくは巨象になったにも関わらず、
小象だった頃にいくら引っぱっても
抜けなかった杭の記憶が邪魔をして、
「中国政府を動かそう」などとは
夢にも思わなかった中国国民。
しかし、ある時、ふとしたきっかけで
鎖でつながれた脚を動かしてみたら、
いとも簡単に杭が抜け、
自分が杭を抜いて自由に動くことができる
巨象に成長していることを発見しました。

中国共産党は巨象になって
自由に動き始めた中国国民を、
情報統制というムチで過去の恐怖を思い出させ、
おとなしくさせようとしていますが、
一度自由になった巨象が再びおとなしくなることはない、
と私は思っています。

中国の網民(わんみん、ネット市民)は
微博の実名登録というムチで打たれて
おとなしくなってしまうのか。
それとも多くの網民が
「実名登録でも正しいことは正しい」と主張をし続けて、
中国共産党が取り締まれないぐらいの
巨体を保つことができるのか。

今、中国の網民の胆力が試されています。





←前回記事へ

2012年2月10日(金)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ